研究課題/領域番号 |
23760729
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
荻 崇 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30508809)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 異方性金属ナノ粒子 / ポーラス粒子 / 中空粒子 / 金属固体触媒 / 噴霧プロセス / 液相法 |
研究概要 |
1)構造が制御された白金担持カーボン触媒粒子の合成と燃料電池性能評価:噴霧乾燥法と含浸法の組み合わせにより、白金が担持された多孔質中空構造を持つカーボン粒子を合成し、固体高分子燃料電池としての触媒性能を評価した。40nmのカーボンナノ粒子を出発溶液として、多孔質中空構造を持つカーボン粒子凝集体を合成し、その後で含浸法により白金ナノ粒子(4nm以下)を析出させた。合成した粒子の触媒性能として、触媒有効表面積と質量活性を評価し、市販のPt担持カーボンブラック(Pt:46wt%担持)と比較した。その結果、比活性において、市販の触媒の2.5倍の性能が得られることを明らかにした。この研究から、触媒材料における担体の精密な構造の制御により、レアメタルなどの貴重な資源を有効に活用できる可能性が見出された。2)テンプレートを用いる酸化物中空粒子の合成:液相法を用いて単分散で球状のポリスチレン粒子を表面電位を制御して合成することに成功した。また、そのポリスチレンをテンプレート材料として用いてTEOSにより中空シリカ粒子の合成に成功した。TEOSの添加量を制御することで、シェルの厚みを3-22nmまで制御できることが明らかとなった。またローダミンBによる吸着量の分析や、比表面積の分析から、今回合成した中空シリカ粒子にはシェル層に穴が少ないことが確認できた。3)白金担持酸化タングステンの合成と光触媒特性評価:本研究では、光析出法(光照射下で光触媒が金属イオンを分解し、光触媒表面に金属を析出させる方法)を用いて、粒子径の異なる白金担持酸化タングステンナノ粒子を合成し、さらに光分解特性評価を実施した。その結果、光分解作用が最も高い酸化タングステンの粒子径は18-26nmであることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の計画は、主にナノ粒子の合成であったが、合成だけにとどまらず各種粒子の触媒特性の評価まで実施するに至った。これにより、最適な粒子径や金属ナノ粒子の担持量などが明らかとなると同時に、新たに興味深い現象も確認された。よって今年度は、更なる触媒特性へ影響を及ぼす粒子の形態・構造化の最適化について実験を進めていく予定である。しかし、用途の幅の観点から現在は酸化物材料の合成がメインになっているため、金属ナノ粒子材料の合成やそのプロセス開発についても今後は検討していく。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は以下の内容について検討する。1)酸化タングステン光触媒性能に及ぼす結晶子径と比表面積の相関性の調査レアメタルであるタングステンの有効利用のため、光触媒性能へ及ぼす最適な比表面積と結晶子径を求める。これにより、光触媒と結晶子径、比表面積の定量的関係を明らかにする。更に、これについては温度が精密に制御された新たな噴霧合成装置を作製する予定である。全ての固液反応において、反応速度定数、触媒有効係数、触媒の時間あたりの反応性を示すTOFを導出し、触媒の活性を評価する。またレアメタルの使用量の削減へ向けたナノ構造体材料(ポーラス粒子およびコンポジット粒子)の作製についても検討する。触媒粒子が付着したテンプレート粒子、無機ナノ粒子を混合した溶液を噴霧乾燥法によって構造化する。実験操作因子(出発溶液濃度、テンプレート径、操作温度、滞留時間、噴霧液滴径、不活性ガスの種類)が金属ナノ粒子の粒子形態、担持量、純度、ポア径、比表面積に及ぼす影響を系統的に調査し、粒子形態の揃った金属ナノ粒子がポーラス構造担体に高収率で担持した触媒を合成する。ポーラス粒子合成では文献[Ferryら: Nano. Lett. 1, 231 (2001)]を参照する。2)白金担持カーボン触媒の構造制御と合成プロセスの改良これまでの白金担持カーボン触媒において、より比表面積が増大し導電率が高くなるカーボン材料の開発を目指す。またこれまで2段階プロセスであった合成法を改良しワンステップでカーボン系触媒材料が合成できるプロセスを開発する。同時に金属ナノ粒子の連続液相合成装置についても検討していく。燃料電池電極の触媒反応は、触媒の酸化還元反応および触媒有効表面積および質量活性比はサイクリックボルタンメトリーにより測定する。さらに触媒の耐候性についても評価する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、研究が予定以上に進行した事、既往の反応器を用いて粒子合成を実施した事などが理由で材料費などの消耗品を低く抑えることができた。また今後、新たな反応器および評価装置の作製を行うため意図的に消耗品の使用量を抑えた。よって、今後は、引き続き構造および形態が制御されたナノ粒子材料の合成と触媒性能に関する実験および評価のための原料および材料などの消耗品として、また本研究課題の最終年度であるため研究成果の国内外で発表、論文化のために研究費を使用する。
|