化学的に合成されたナノ粒子を工業的に利用するために、液相および気相をベースにした様々な方法が検討されている。液相法においては溶媒除去時におけるキャピラリーストレスによる粒子の凝集・構造崩壊、気相法では構造形成が困難といった問題点が指摘されている。本研究では、従来法の問題点を同時に解決するための手法として、超臨界CO2を合成場とし、光学材料として利用可能なナノ粒子の微細構造および表面改質技術の開発に挑戦している。本年度は、ZnOナノ粒子の秩序構造体形成技術を提案し、新たなフォトニック(光学)材料の製造技術の確立を研究目標としている。本年度は以下の課題に取り組んだ。1)超音波キャビテーションを利用した高圧流体中でのナノ粒子の分散技術の開発、2)表面改質したZnOナノ粒子のモノマー化と超臨界CO2中での高分子複合化、3)表面修飾したZnOナノ粒子のバイオイメージング素子としての利用法の確立である。合成したZnO量子ドットナノ粒子は、添加する触媒であるLiOH濃度により蛍光波長が大きく変化した。また、量子効率も約60%を達成した。ZnOナノ粒子の表面修飾には、3-aminopropyltrimethoxysilane (APTMS) 、3-(trimethoxysilyl)propylmethacrylate (TPM)、Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane (TEOS)などの反応性を有するシランカップリング剤が有効であることが分かった。また、APTMSにより表面改質したZnOナノ粒子は、sulfo-NHS-LC-biotonを用いることで、容易にビオチン分子を粒子表面に導入することができた。ビオチン化した蛍光性ZnOナノ粒子を用いることで、ラットの脊髄細胞中の神経細胞や癌細胞Caco-2のアクチンフィラメントを選択的に染色できた。
|