本研究課題では、グアイアコール(o-メトキシフェノール)を基質として主に用い、水素化・水素化分解によるシクロヘキサノール合成を行った。シクロヘキサノールへの合成ルートとして、(1) 1段反応による合成、(2) 水素化触媒と水素化分解触媒を組み合わせた多段合成の2通りを試みた。 (1) について、23年度ではCo系触媒を主に探索したが、触媒の安定性の問題があり24年度ではPt系およびRu系触媒の探索を行った。結果、担持Ru触媒と塩基を組み合わせることにより、1段で90%収率でシクロヘキサノールを得ることに成功した。この反応は文献での最高収率は70%以下であり、新たな含酸素官能基の除去反応としてバイオマス変換化学の進展に寄与するものであるまた、この触媒系は保存性や繰り返し利用の安定性にも優れており、mおよびp体のメトキシフェノールのメトキシ基除去にも適用できた。この結果は2013年3月の触媒討論会で発表し、近々論文として詳細を公表する予定である。 (2)の反応について、香環の水素化、メトキシ基の水素化分解によるシクロヘキサンジオール合成、ジオールの水素化分解によるシクロヘキサノール合成の3段階で行った。本年度は最も困難であるジオールの水素化分解のステップについて有効なイリジウム-レニウム系触媒の反応の詳細を調査した。結果、本触媒が複数の反応機構で水素化分解が進行しうること、物質ごとの吸着特性の違いが反応の選択性に影響することを明らかにした。本研究での触媒解析は他の多くの脱酸素触媒の解析に貢献した。 研究期間全体として、リグニンの資源化で重要なステップである、環に結合した含酸素官能基を部分的に除去する反応を2通り開発できたと言える。
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