研究概要 |
本申請研究では,効率的な二酸化炭素のエポキシドへの化学的固定化反応を達成するため,Ni-Zn層状複塩基性塩(NiZn)構造中の孤立Zn(II)種をLewis酸点に用いる触媒設計を施した. この物質変換反応を温和な条件下達成する為には,Lewis塩基の存在が必須である.前年度までの研究結果から,NiZnのアニオン交換能を利用することで層間内へ4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニルエトキシド(DMAPE-)をインターカレーションし,Lewis酸-Lewis塩基複合型不均一系触媒が開発できることが明らかとなった.これを踏まえ,種々の単純なアルコキシドを検討した結果,エトキシド導入型NiZn(EtO-/NiZn)触媒が得られた。EtO-/NiZn触媒は気圧二酸化炭素雰囲気下にて効率良く反応を進行させた.一方,アニオン分子サイズの小さなMeO-/NiZn触媒においては,反応場となる層間隔が小さくなり,触媒活性は低下した.エポキシドを反応基質として用いる場合,求核性の高いアルコキシドは酸素を含む三員環の開裂をもたらすが,本EtO-/NiZn触媒存在下では,選択的に環状カーボネートが得られた.また,触媒活性・選択性の低下無く再使用可能であった.N,N-dimethylformamide (DMF)を溶媒に用いる場合,例えばKOEtやKOMe,NaOEtやNaOMe等の均一系強塩基触媒存在下での反応においてもエポキシドの開環反応は進行せず,二酸化炭素の挿入反応を経由する環状カーボネートが生成した.このことから,DMF中のアルコキシドが有効なLewis塩基として二酸化炭素を活性化し得ることを見出した.
|