研究課題/領域番号 |
23760739
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
宮地 輝光 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (40452023)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 酵素反応 / 分子認識 / 触媒・化学プロセス / 直鎖アルカン / アルコール |
研究概要 |
本研究では、n-アルカンからアルコールへの位置・立体選択性に、アルカン水酸化酵素活性部位の空洞構造が及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 平成23年度は、以下の2つを達成した。(1)メタン酸化酵素のn-アルカンからアルコール異性体への選択性:X線結晶構造解析による酵素活性部位構造が明らかであり、且つ炭素鎖の短いn-ブタン、 n-ペンタンを基質とするメタン水酸化酵素(銅含有メタンモノオキシゲナーゼ(pMMO)および鉄含有メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO))のアルカンからアルコールへの位置・立体選択性を明らかにした。具体的には、pMMOを合成する微生物2種類およびsMMOを合成する微生物1種類を調製し、これら菌体を用いて炭素数 4~8 の n-アルカンからのアルコールへの酸化反応を行った。その結果、pMMOはR体の2-アルコールを選択的に生成した。また、sMMOはS体の2-アルコールを選択的に生成した。この2つの酵素の2-アルコール立体異性体への選択性は、n-アルカンの分子サイズに依存し、pMMOではn-ペンタン、sMMOではn-ヘプタンで最も高い選択性を示した。この最も高い立体選択性を示したn-アルカンが酵素の基質結合部位空洞に占める割合はほぼ同じであった。このことから、n-アルカンから2-アルコール立体異性体への選択性は、基質結合部位を形成するアミノ酸残基や活性点の種類に寄らず、基質結合部位空洞に占める基質n-アルカンの割合に依存するという仮説を立てた。(2)大腸菌によるシトクロムP450BM-3発現系の構築:(1)の仮説を検証するため、酵素の基質結合部位の大きさがn-アルカンからアルコール立体異性体への選択性に及ぼす影響を明らかにする。そのため、基質結合部位空洞の改変が可能なアルカン酸化酵素であるシトクロムP450BM-3の調製方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の遂行にあたってはアルカン酸化酵素を合成する微生物の生育状況に影響を強く受ける。平成23年度に予定していた2種類のsMMOのうち1種類、およびアンモニア酸化酵素(AMO)2種類を合成する微生物の生育状況が悪く、予定していた全ての天然型アルカン酸化酵素の位置・立体選択性を明らかにすることができなかった。 これら微生物の培養方法は平成24年度に確立し、酵素反応を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に遂行できなかった、3種類のアルカン酸化酵素のアルカンからアルコールへの位置・立体選択性を明らかにし、「n-アルカンから2-アルコール立体異性体への選択性は、基質結合部位空洞に占める基質n-アルカンの割合に依存する」という仮説を検証する。 また、シトクロムP450BM-3の基質結合部位の大きさの改変がn-アルカンからアルコール立体異性体への選択性に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
【今年度の執行額に残額が生じた状況】平成23年度に予定していた予定していた2種類のsMMOのうち1種類、およびアンモニア酸化酵素(AMO)2種類の調製が遅れた。そのため、これら酵素の位置・立体選択性を明らかにするために必要とする分析カラムおよび標準試薬購入費用を次年度に使用することとした。【次年度の研究費使用計画】以下の実験計画を遂行するための実験試薬および器具の購入に使用する。1.平成23年度に調製できなかった2種類のsMMOのうち1種類、およびアンモニア酸化酵素(AMO)2種類を平成24年度に確立し、これら酵素のアルカンからアルコール異性体への選択性を明らかにする。そのため、それら酵素を合成する微生物の培養および微生物からの酵素精製に必要な試薬およびカラム等消耗品を購入する。2.基質結合空洞体積を改変したシトクロム P450BM-3 変異体を用いてn-アルカン酸化反応を行い、アルコールへの位置・立体選択性を明らかにする。また、基質結合空洞体積を改変した修飾型シトクロム P450BM-3を用いて、n-アルカン酸化反応を行い、アルコールへの位置・立体選択性を明らかにする。これら反応に必要な試薬および実験器具、カラム等消耗品を購入する。
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