アルコールを出発原料としてエチレンやプロピレン等のバルク化学原料として重要な低級オレフィンを製造するためのゼオライトの合成を行った。本年度は、前年度に検討したゼオライトの骨格構造を決める因子である有機化合物を使用しない条件での小細孔アルミノケイ酸塩ゼオライトの合成の汎用化を行った。数種類のアルカリ金属、金属アルコキシドの組合せの最適化により、合成ゼオライトの組成範囲を前年度の3倍まで拡張することに成功した。合成されたゼオライトはメタノール変換反応において、エチレン、プロピレンを選択的に製造し、触媒寿命も3倍以上に伸びることを見出した。構造を変えずに物理化学的特性を変化させたゼオライトの合成手法を、大細孔を有するシリコアルミノリン酸塩への応用を検討した。合成に使用する有機化合物を変化させても、同一構造および組成を有し、酸強度、酸量、粒子形態を制御できることを見出した。これらの合成手法は、従来は合成範囲や物理化学特性が限定されていたゼオライトの物性の点からの多様化および固体触媒としての広範な応用展開に繋げられると考えられる。 さらに、小細孔アルミノシリケートを対象に、炭化水素活性能を有する金属元素を担持したゼオライト合成を行い、エチレンなどの低級オレフィンの重合を制御した炭化水素の生成における触媒特性評価を行った。いずれの合成ゼオライトを用いてもエチレンからはプロピレンが選択的に生成するが、直鎖のブテン類がアルコールを原料とした場合に比較して多く生成した。中でも、SSZ-13が金属の担持量の制御、ゼオライト酸性質の制御、炭化水素の生成物分布の制御、長寿命の点で他の小細孔ゼオライトよりも優れていることを見出した。金属-ゼオライトの組合せが低級オレフィン製造にも優れていることが示され、触媒による炭化水素の製造プロセスの広範化に寄与できると考える。
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