研究課題/領域番号 |
23760742
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
齊藤 信雄 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (40313572)
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キーワード | 半導体光触媒 / 金属リン化物 / 水分解反応 / 水素生成 |
研究概要 |
本研究課題ではd10電子状態の典型元素を基本骨格とした複合リン化物を精緻に合成し、水の分解反応に対する光触媒効果を調べることを目的としている。平成24年度は平成23年度に得られた知見を基にしてZnGeP2、およびZnGeP2-ZnSnP2の固溶体粒子を合成し、光触媒活性、光吸収特性、および電子状態を詳細に調べた。ZnGeP2を各元素の単体を用いて真空封入法で作製し、得られた粉末をボールミルで粉砕、さらに欠陥構造を取り除くために真空下で再焼成することにより光触媒とした。再焼成を行うことにより、拡散反射スペクトルの吸収端がシャープになることから欠陥構造が顕著に減少すること、電子顕微鏡観察からサブミクロンオーダーの粒子が得られること明らかにした。本研究により、光触媒粒子として適した欠陥構造の少ない複合リン化物の合成を行う条件を確立することができた。得られたZnGeP2に助触媒としてRuO2を担持し、閉鎖型循環反応装置で水分解反応を行った。光照射により水素の生成が見られ、再焼成を行っていないZnGeP2と比べると2倍近い光触媒活性が得られた。さらに、ZnGeP2-ZnSnP2固溶体粒子についても同様にボールミル粉砕、再焼成を行うことにより光触媒活性が増加することを見出した。ZnGeP2およびZnGeP2-ZnSnP2固溶体は、420 nm以下の光をカットオフフィルターで遮断しても、光触媒活性が得られることから、新規可視光応答型光触媒として有用な半導体材料であると結論した、また、密度汎関数法による電子状態の計算から、ZnGeP2は価電子帯はP3p軌道、伝導帯はZnとGeのsp混成軌道によって構成されること、バンドギャップは可視領域の光のエネルギーに対応することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年~24年度に計画した研究は順調に進行しており、ZnGeP2およびZnGeP2-ZnSnP2固溶体の合成、物性評価、および光触媒活性を詳細に調べることができた。しなしながら、可視光域での光触媒活性は期待よりも低く、さらに焼成温度などの合成条件を最適化することが必要である。一方、平成25年度実施予定のGaP-ZnS固溶体については、犠牲試薬の存在下ではあるが、水素生成に対して高い活性を示す光触媒となることを見出した。GaP-ZnS固溶体のGaP/ZnSの比率を変化させてバンド計算を行った結果、比率によりバンドギャップが変化し、バンドギャップ制御が行えることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
申請書の研究計画に基づき、GaP-ZnS固溶体の光触媒作用を精緻に調べることを行う。予備実験において、GaP-ZnS固溶体はすでに光触媒として作用することを明らかにしており、今後は、固溶体比率の最適化や異種元素の添加を行うことによってさらなる活性化を図る。さらに追加研究としてGaPを窒化してNをドープすること、GaNにPをドープすることを行い、バンドギャップを制御すると共に、光触媒としての性能を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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