研究課題/領域番号 |
23760743
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 浩亮 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90423087)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 光触媒 |
研究概要 |
21世紀の化学は、環境を強く意識した発展が不可欠であり、物質変換においては、高選択的で超効率な触媒系の開発が望まれている。その達成には、クリーンで無尽蔵な光エネルギー(太陽光)を利用した選択的物質変換反応を可能とする光触媒の開発が重要な課題と言えるが極めてチャレンジングである。酸化チタンに代表される半導体光触媒は、酸化・還元力が強すぎるため選択性が低く、その応用は完全酸化分解反応などダウンストリームプロセスに留まっている。紫外光を利用した環化、異性化、転位反応なども古くから研究がなされているが、低収率・低選択性などの問題があり、実用化には適していない。そこで、本申請課題では、これまで不可能とされてきた高付加価値生成物を得る可視照射下での物質変換反応を、表面固定化光応答性金属錯体をモチーフにした新規光触媒により達成する。具体的には、以下の3つのサブテーマを行う。1)強りん光発光性金属錯体を利用した高難度光酸素酸化の実現2)有機-無機ハイブリッド型光水素発生デバイスの構築3)表面プラズモン共鳴を利用した金属錯体の光触媒活性増強本年度は、上記サブテーマに関して、各種光触媒の調製および、光触媒活性の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種ゼオライト、メソポーラスシリカの細孔内に様々な光応答性金属錯体(Pt, Ir, Ru etc.)の導入を行った。金属錯体の導入法としては、ship-in-a bottle法あるいは、有機リンカーへの固定化法を用いた。ゼオライトの細孔は、分子の配向と配列が制御された異方性を有するミクロ空間環境場であり、しかもイオン交換能を有することから、交換カチオン種を選択することで、細孔内の静電場や空間体積などの分子環境場を任意に制御できる。例えば、Li+やNa+などのイオン半径の小さい軽原子、Cu+やAg+などの中間原子、Rb+やCs+などの重原子では、細孔内の空間体積や静電場が異なる。一方、メソポーラスシリカでは、合成段階の構造規制剤の種類や、Si/Al比を変えることで、細孔サイズや表面の酸・塩基性をコントロールすることが可能である。本申請課題では、内包した光応答性金属錯体の電子状態、配位環境、光励起過程を、細孔環境により精密制御することが目的であり、調製した触媒のキャラクタリゼーションを次年度以降に行う。 また、可視光照射下での光酸素酸化反応、水からの水素生成を行った。同時に反応最適条件(溶媒、触媒量等)も検討し、従来よりも高い活性が得られることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は。以下の項目に焦点をしぼり研究を行う。1光触媒キャラクタリゼーション比表面積測定、XRD、SEMにより触媒のバルク構造を解析する。また、固体NMR、XPS、IR、XANES/EXAFS等を用いて行い、触媒活性種近傍の微細構造と光触媒機能の関連を明確にする。さらに、フォトルミネッセンス、UV-vis測定により、光吸収特性を詳細に検討する。これらの分析機器は、既設もしくは借用が可能である。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK-PF)の研究課題が採択されており、XANES/EXAFS測定も可能である。さらに高輝度光科学研究センター(SPring-8)での研究課題も随時申請予定である。種々の分光学的手法を駆使した触媒活性種近傍の微細構造に関する知見と触媒機能の関連性を解明することで、更なる高性能光触媒の設計指針にフィードバックする。2 反応メカニズムの解明触媒キャラクタリゼーションと併せて、in-situでのUV-vis、フォトルミネッセンス、XANES/EXAFS測定に重点を置き反応メカニズム、光触媒活性発現の要因を明らかにする。また、活性酸素種の同定はESRにて行う。様々な反応ステージでの光吸収特性評価、活性点近傍構造の同定によって、反応基質・反応ガスの吸着・配位により生成する中間体の微細構造をも高精度で決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品(触媒調製・反応用試薬、分析ガス等):700千円海外旅費(ICC2012(ドイツ)):350千円国内旅費(SPring-8、KEK-PF、触媒学会、石油学会):150千円謝金(実験補助アルバイト):200千円その他(学会参加費、論文投費):100千円未使用金の発生した経緯とその使用計画:研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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