研究概要 |
申請者らは、電流計測型バイオセンサーをカロリメトリーの測定セルに導入することにより、電気化学測定と熱測定との複合システムを構築し、バイオマス加水分解過程の詳細な酵素反応速度論的解析、とくにエンド型とエキソ型酵素による協同効果についての定量的解析を行なうことを目指しているが、本年度は、まずエンド型であるセロビオヒドロラーゼによる各種セルロースの加水分解反応を、電流計測型バイオセンサーを用いることにより追跡し、とくに定常状態に至る前の、短い反応時間(1分程度)における反応速度の変化について詳細に検討を行なった。短い反応時間における生成物の濃度変化を正確に測定するため、電流計測型バイオセンサーの酵素固定化法に工夫を施し、従来のものより格段に応答の速い(1秒以内)センサーを得ることに成功した。そのセンサーを用いて各種セルロースの加水分解反応速度を測定・解析したところ、実験結果はある一定数のセロビオース単位まで加水分解が進行したときセロビオヒドロラーゼが非活性型になることを仮定したモデルからの予想とよく一致し、セルロース表面に結合した非活性型セロビオヒドロラーゼの遅い解離が定常状態前の反応速度を支配していることが示唆された。以上の研究結果は、論文2報(Journal of Biological Chemistry, 287, 1252-1260 (2012); ibid., in press (2012))および学会での講演等において発表した。
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