研究課題
申請者は、電気化学測定と熱測定との複合システムを構築することにより、バイオマス加水分解過程の詳細な酵素反応速度論的解析、特にエンド型とエキソ型酵素による協同効果についての定量的解析を行なうことを目指している。昨年度までに、作製した電流計測型バイオセンサーがバイオマス加水分解過程の解析に有用であることを示すことができ、またエンド型とエキソ型酵素による協同効果を検討するため、同センサーをカロリメトリーの測定セルに導入し、電気化学測定と熱測定を同時に行なうことができた。また、エンド型とエキソ型酵素によるバイオマス加水分解の追跡についても、予備的な検討を行なった。速度解析の結果、特にエキソ型酵素の加水分解速度が反応初期において急激に変化していることが明らかになった。しかしながら、電気化学測定と熱測定の相互干渉の問題や、小型のセンサーを簡便かつ再現性良く作製するための方法の改良等、克服しなければならない課題も見出された。そこで平成25年度は、これらの点について検討を進めた。まず、電気化学測定と熱測定の相互干渉の問題については、電気化学測定への熱測定の影響と、熱測定への電気化学測定の影響に分けられる。前者は熱測定系からの電気的ノイズの影響が大きいが、接地を工夫するなどしてこれらの低減を図った。また後者についてはバイオセンサーの電極反応熱を小さくするため、より表面積の小さいセンサーの作製を試みた。小型のセンサーを簡便かつ再現性良く作製するための方法については以前より改良を図ってきたところであるが、平成26年度は酵素の固定化法等に加えて電極素材についても検討を加える予定である。
2: おおむね順調に進展している
電流計測型バイオセンサーの小型化およびカロリメトリーセルへの組み込み、ならびにエンド型とエキソ型酵素によるバイオマス加水分解の追跡について一定の成果が得られた。とくにエキソ型酵素の加水分解速度が反応初期において急激に変化していることが明らかになった。
引き続き電気化学測定と熱測定との複合システムについて検討し、糖質バイオマスの分解過程を追跡する実験を行なう。これまでに見いだされた測定システムの問題点を克服したうえで、今後は実際に種々の糖質バイオマスを用いて条件を変えながら測定を行ないつつ、必要があれば適宜システムに改良を加える。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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