申請者は、電気化学測定と熱測定との複合システムを構築することにより、バイオマス加水分解過程の詳細な酵素反応速度論的解析、特にエンド型とエキソ型酵素による協同効果についての定量的解析を行うことを目指している。昨年度までに、作製した電流計測型バイオセンサーがバイオマス加水分解過程の解析に有用であることを示すことができ、またエンド型とエキソ型酵素による協同効果を検討するため、同センサーをカロリメトリーの測定セルに導入し、電気化学測定と熱測定を同時に行うことができた。また、エンド型とエキソ型酵素によるバイオマス加水分解の追跡についても、予備的な検討を行なった。速度解析の結果、特にエキソ型酵素の加水分解速度が反応初期において急激に変化していることが明らかになった。しかしながら、電気化学測定と熱測定の相互干渉の問題や、小型のセンサーを簡便かつ再現性良く作製するための方法の改良等、克服しなければならない課題も見出された。さらに、電流計測型バイオセンサーによる測定が、糖質バイオマス加水分解において生成した単糖および二糖の変旋光速度の影響を受けるといった問題も見出された。そこで平成26年度は、変旋光速度の影響を受けないセンサーを得るために、電極に固定化する酵素を従来のセロビオースデヒドロゲナーゼからピラノースデヒドロゲナーゼに変更したものを作製した。これにより変旋光速度の影響を受けない測定が可能となった。
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