研究課題/領域番号 |
23760749
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金 美海 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30506449)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生物・生体工学 / 細胞・組織 / 再生医療 / 培養面設計 / 未分化維持 / iPS細胞 |
研究概要 |
ヒト人工多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)研究の実用化のためには,iPS細胞の未分化性を維持したまま安定に増幅する培養法や分化誘導法の開発が必要である.これまで,我々が考案したグルコース提示型デンドリマー面では,デンドリマーの世代数による細胞形態の変化を促すことにより分化・未分化制御の可能性が示唆された.本申請課題では,「多分化能を有するヒト iPS 細胞の未分化維持するための培養面の設計および新規増幅培養プロセス開発」を試みた.平成23年度では,ヒト iPS細胞培養に適したグルコース提示型デンドリマー培養面設計および未分化維持機構の解明を行った.デンドリマー世代数を変化させたグルコース提示型デンドリマー面上でヒト iPS細胞を培養したところ,世代数1の培養面ではゼラチン面上での未分化細胞と同様に細胞質が小さな丸い核をもつ小細胞が密集したコロニーを形成し,輪郭が際立つことが確認された.しかし,世代数の増加と伴に,コロニー全体的に細胞遊走速度が促進され非常に大きい細胞の頻度が高くなり,部分的にコロニー内に穴が生じることが分かった.各培養面上で形成されたコロニーにて足場タンパクのRac 1の発現と未分化状態の関係について検討したところ,世代数3の培養面上で形成されたコロニー内でRac1の発現が強い細胞ではE-cadherinの発現低下を示しOct3/4陰性であるのに対し,G1面上ではコロニー全体的にRac1の発現が低下しE-cadherinが強く発現を示されOct3/4陽性であることが確認された.これらの結果よりヒトiPS細胞の未分化維持にはコロニーの形成過程の細胞の遊走性と強い関連を持つ足場タンパクのRac1由来のE-cadherin細胞間接着の誘導に関与していると考えており,ヒトiPS細胞の未分化性を維持させるためには最適な細胞コロニー内の遊走が必要だと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,細胞組織工学における基盤技術として,iPS細胞の未分化誘導可能な培養面を開発し,さらにそれらの技術を用いて,培養プロセスを確立するものである.当初計画予定であった培養面の開発と基礎的なiPS細胞未分化維持機序などは既に明らかにしつつあり,さらに,より実用性の高い応用研究に向け展開することを考えている.
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今後の研究の推進方策 |
iPS細胞のコロニー培養の未分化維持に関する作用機序などの基礎的研究は既に明らかにしつつあり,今後シングルセルのレベルにて接種・培養を実施し,形成される細胞集塊の特性(増殖,生存,分化)の評価に展開する.また,新規増幅培養プロセス開発に不可欠な培養面の効率性,安定性等のより実践的試験を中心とした段階さらに汎用性を目指した幹細胞への適用と実践的な課題に取り込む.また,本申請の目標設定は,予備的な検討が終了していること,などから実現可能なものと判断できる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費はヒトiPS細胞培養のための,培地,増殖因子などに使用する.また,細胞評価のための蛍光試薬など高価な試薬を使用しなければならないことを考慮して,消耗品費として予算を計上した.
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