研究課題/領域番号 |
23760751
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉本 誠 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80322246)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | リポソーム / 酵素反応 / バイオリアクター / ナノバイオ / せん断流 |
研究概要 |
酵素を内包させたリポソームをクラスター化させ,液体せん断流と温度に応答して酵素活性を変化させる触媒を開発することを目的に初年度の研究を実施して下記結果を得た。1.リポソームのクラスター化反応脂質膜表面にアミノ基あるいはカルボキシル基を有するリポソーム同士を共有結合させる方法を検討した。クラスター化反応の進行はリポソーム懸濁液の粒子径分布の変化を動的光散乱法で測定して評価した。その結果,共有結合法によるクラスター化は低レベルであることがわかった。そこで,リポソーム膜に負電荷を有する脂質を30 mol%含有させ,カルシウムイオンを添加したところ,静電相互作用により一定の粒子径をもつリポソーム間の凝集体形成が認められた。リポソームに内包させた蛍光色素はこの凝集過程で殆ど漏出しなかった。すなわち,リポソーム膜は融合せずクラスター化していることがわかった。2.せん断流・温度複合ストレスに対するリポソーム膜の応答性コーン・プレート型粘度計内に蛍光色素封入リポソームを懸濁して,色素の漏出挙動を40~55℃で検討した。その結果,高温域ではせん断流に応答して脂質膜透過性が顕著に増大することを明らかにした。平均粒子径が200 nm以下のリポソーム系では,せん断ストレス負荷による粒子径分布の有意な差異は認められなかった。一方,平均粒子径が300 nm以上のリポソームの一部はせん断ストレスの負荷により崩壊した。これらより,せん断流に対するリポソームの応答性は温度と粒子径に依存することを明らかにした。以上の結果は,リポソームのクラスター化とせん断流・温度変動に対するリポソームの応答性に関する重要な知見であり,これらをもとに次年度の酵素反応系への展開が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リポソームのクラスター化反応は当初試みた共有結合法よりも静電相互作用を利用する方法が効率と凝集反応の制御の観点から有利であることを示した。また,せん断流と温度に対するリポソーム膜の応答性に関する詳細なデータを蓄積することができた。ただし,クラスター化リポソームのせん断流に対する応答性の評価は次年度での実施とした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度得られた知見をもとに,異種酵素を内包させた荷電リポソームを調製・クラスター化する。これを温度・せん断ストレスを負荷した流体中に懸濁して,酵素の安定性と反応性の特徴を明らかにする。モデル酵素系として複合酸化酵素を用いる。本反応系の気泡塔バイオリアクターへの適用性も明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
高純度脂質,酸化還元酵素,各種分析関連の試薬類の購入を中心に予算を執行する。成果発表のための旅費および研究の一部について実験の補助を受けるための謝金も申請している。
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