研究課題/領域番号 |
23760752
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武井 孝行 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90468059)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ファイバー / 毛細血管 / 再生医療 |
研究概要 |
肝臓などの大型の代謝系臓器を人工的に創製することができれば、移植医療のドナー不足の問題を解決でき、重篤な臓器疾患患者の救命に繋がる。その実現には、まず、生体の緻密な毛細血管網を再現できる技術の確立が不可欠である。本研究では、極細のファイバーを利用することで、生体血管網に極めて酷似した流路ネットワークならびにそれを利用した重厚三次元組織体創製技術の確立を目指している。本年度は以下の項目について検討を行った。1.極細ファイバーの作製:湿式紡糸法を利用して極細のファイバーの作製を試みた。具体的には、注射器に充填した高分子溶液をゲル化溶液中に押し出し、形成したファイバーをローラーで引っ張りながら回収した。ファイバーの引っ張り速度を制御することによって、生体の毛細血管の内腔とほぼ同等の直径を有するファイバーを作製することができた。2.毛細血管網様微細流路ネットワークの作製:湿式紡糸法により得られた極細ファイバーの束をゲル内に包埋後、ファイバーのみを溶解することによりゲル内部に生体の毛細血管とほぼ同じ内腔直径を有する流路を作製することができた。また、その流路は途中で閉塞することなく、流路内部に培地や血液などを流通可能であった。3.微細流路が小血管サイズの流路に集束する流路ネットワークの作製:極細ファイバーと同じ材料からなる直径5 mm、長さ1 cm程度の棒に、極細ファイバーの束の両端をつなぎあわせた。次に、それをゲル内に包埋後、溶解することで、極細流路が小血管サイズの流路に集束する流路ネットワークを作製することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実施計画」の内容を概ね達成できているため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の検討を行う。1.上記ゲルファイバーを用いた抗血栓性"内皮化微細流路"の作製:本年度使用した流路の支持体であるゲルはアガロースゲルである。従って、流路を血管内皮細胞で覆うためには、このゲルに細胞接着性を付与する必要がある。そのため、流路の支持体をゼラチン-アガロースの混合ゲルとする。尚、細胞培養環境温度下においてゼラチンが溶解し、ゲルから溶出してしまわないように、トランスグルタミナーゼなどの酵素を用いてゼラチンを架橋する。2. 三次元肝組織様構造体創製に向けた培養条件の最適化:ゼラチン-アガロースの混合ゲル内に肝癌細胞をあらかじめ包埋しておき、上記で作製した"内皮化微細流路"に培地を流通させることで、肝癌細胞を増殖させる。ここでは培地流速や培養期間の最適化を行い、三次元肝組織様構造体の創製を目指す。3.ラット重度肝疾患モデルを用いた三次元肝組織体の治療効果の検証:ラット重度肝疾患モデルに作製した三次元肝組織様構造体を体外循環回路でつなぎ、その治療効果を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度4月1日に研究代表者が所属機関を変更する。それに伴って、動物細胞培養関連設備を整える必要があるため、クリーンベンチや凍結細胞保存容器を購入する予定である。また、次年度は動物細胞を利用した検討が多いため、多くの細胞培養用試薬やプラスチック製消耗品等を多量に購入する予定である。また、開発を目指している"三次元肝組織体"の治療効果の検証のために、多くの実験動物の購入を予定している。
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