本年度は、昨年度に引き続き卵管特異的発現可能なTGFβ遺伝子導入ニワトリの解析と、アレルゲンエピトープ含有卵白を用いたアレルギー治療を行った。 TGFβ遺伝子導入ニワトリの血餅より抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRしたところ、これまで作製した遺伝子導入ニワトリと同程度の頻度で外来遺伝子の導入を確認することができた。性成熟したメンドリの各組織における転写産物を評価したところ、卵管特異的にTGFβ遺伝子の発現が認められた。このところから、レポーター遺伝子だけでなく目的遺伝子でも卵管特異的遺伝子発現システムを達成することが可能であったといえる。 並行して、より効果的な免疫寛容誘導を目指して、スギ花粉アレルゲンエピトープを、T細胞への認識能増加ならびに血中安定性向上可能な融合タンパク質とし、遺伝子導入ニワトリで発現させた。ウエスタンブロット解析を行ったところ、卵白中に適切な構造で発現していることがわかった。ELISA法の測定結果から、目的タンパク質は卵白中に長期間安定的に生産されていた。同卵白をあらかじめ経口投与させたマウスでは、花粉症症状が緩和されており、花粉症モデルマウスへの経口投与においても花粉症のアレルギー症状が軽減していたことから、遺伝子導入ニワトリ由来のエピトープペプチド含有卵白はアレルギー治療に有効であると考えられる。現在詳細な解析を行っているTGFβ遺伝子導入ニワトリ由来の卵白と併用することで、さらなるアレルギー治療になりうることが示唆された。
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