無脊椎動物であるカイメンからは、様々な分野において重要な生理活性を持つ二次代謝産物が多く発見されている。カイメンが多数の細菌と共生関係にある事から、近年ではカイメンから発見されている二次代謝産物が共生細菌由来である事がわかった。しかしながら、これらの共生細菌を取得や同定するためには様々なアプローチが紹介されたが、未だに確かな成果が得られていない。本研究は、新たなアプローチとして単一細胞解析に着目し、カイメン内の共生細菌と二次代謝産物の関連性を単一細胞レベルで解析を試みた。 本研究では、Theonella swinhoeiをモデルカイメンとし、二次代謝産物であるOnnamide AおよびMisakinolide Aを生産する共生細菌の探索および同定を行い、また、生産細菌の培養を目的とした。昨年度は、フローサイトメーターを用いて、単一細胞をソートしたサンプルをMultiple displacement amplification(MDA)法およびNested-PCRによりそれぞれの物質のポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子断片の増幅を行い、Onnamide Aの生産共生細菌の同定に成功し、Entotheonella sp.と決定した。本年度は、Onnamide Aの生産菌の性質をより理解するために、Entotheonella sp.のゲノムを次世代シーケンサーにより解読をした。その結果、驚くことにOnnamide Aだけではなく、Entotheonella sp.は20以上の二次代謝産物生産経路を持っている事が明らかになった。この結果により、Entotheonella sp.はBacillus、PseudomonasやStreptomycesと同様に様々な二次代謝産物を生産する新規な細菌種である可能性が示唆された。
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