研究課題/領域番号 |
23760759
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西川 雅章 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60512085)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自己展開材料 / 機能性ポリマー / マイクロメカニクス / 熱力学的特性 / 形状回復性・形状固定性 |
研究概要 |
宇宙構造展開材料への応用を目的として,機能性ポリマー複合材料の適用が期待されている.特に,形状記憶ポリマーは,ガラス転移温度を境に熱力学的特性が変化することで,優れた形状固定性・形状回復性を発揮する材料であるが,宇宙展開構造応用では,形状固定性の活用が重要な鍵となる.本研究では,実験とマイクロメカニクス解析との対比により,形状記憶ポリマー複合材料が形状固定性や形状回復性を発揮するメカニズムを調べ,その最適設計の指針について検討することを目的として,研究を遂行した.1. ポリウレタン系形状記憶ポリマーのフィルム加工を実施し,繊維強化形態を変化させた形状記憶複合材料を加圧プレス法にて成形する作製法を確立した.2. ポリマー材料特性の温度依存性を考慮した粘弾性有限要素解析手法とマイクロメカニクス手法を組み合わせることで,形状記憶ポリマー複合材料の曲げ負荷下での形状固定性・形状回復性について予測する数値解析モデルを構築した.材料内部の繊維強化の不連続によって形状固定性・形状回復性が変化することが分かり,形状固定性は最終的に回復する形状に影響を及ぼすことが予測された.3. 繊維マットにスリットを導入する方法により,繊維強化形態を意図的に変化させた材料を作製した.作製した材料を用いて熱サイクル付与による展開試験を行い,その形状固定性・形状回復性を評価した.曲げの外側に多くの繊維端を配置し,繊維端が一定箇所に集中しないように分散させることが,形状固定性と形状回復性との両性質の向上を実現する有力な材料設計であるという結論を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形状記憶複合材料の作製をフィルム加工とプレス成形を用いた手法により実現し,スリットを導入するコンセプトを利用して異なる繊維強化形態を再現可能となった.この結果,最適な機能性を与える内部構造に関する知見を得ることができた.また材料特性の温度依存性を考慮した数値シミュレーションにより,形状固定性・形状回復性が議論できており,材料内のメゾスケールの内部構造の影響を評価することが達成されている.これらの実験・解析手法を応用することによって,高信頼性展開構造を実現するための最適な材料設計の指針を得ることが可能となったと言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度,繊維強化形態を変化させた内部構造を有する形状記憶複合材料の作製を実現して熱サイクル過程の実験・解析が実施できる段階まで到達した.そこで,今後はさらに,高信頼性展開構造等で必要となる材料の変形能力に主眼を置き,変形能力を最大化しながら,機能性(形状固定性・形状回復性)の観点で繊維強化形態を最適化する方法について研究を推進する.また,本年度構築した手法を利用して,これらの機能性発現を裏付けるメゾスケールの力学について検討を進める.特に,展開構造用の機能性材料の信頼性確保の観点から問題となる材料内の残留ひずみが熱サイクル負荷下で蓄積する過程について詳細に定量化することが重要と考えられるので,この点について更なる評価を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,材料内の残留ひずみが熱サイクル負荷下で蓄積する過程について詳細に定量化することを目的とするため,顕微鏡下で熱サイクル負荷を与えながら,材料の変形や温度を定量化するための実験システムの構築を行う.そこで,赤外線温度センサや貼り付け温度センサによる温度調節器の導入を検討している.その他,試験用材料費や実験消耗品,数値計算用消耗品等に使用する.また,最終年度となるため,成果報告のための旅費にも使用する.
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