研究課題/領域番号 |
23760765
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荻 芳郎 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (00512005)
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キーワード | 航空宇宙工学 / 展開構造物 / 空気膜 / インフレータブル / 機械要素 / 建築構造 / 弾性梁 / 再現性 |
研究概要 |
インフレータブル膜面構造の大変位展開挙動の再現性を向上させるために,大変形可能な弾性梁を組み込んだ構造物を提案している.本研究ではこれまで,円筒膜の試験体の収納展開試行実験により,提案概念が実現可能であることを示している. 展開構造物の大変位挙動を予測するために,数値解析技術は重要であるが,無ひずみ大変位を生じる膜構造においては,非線形有限要素法における接線剛性行列が特異になり解析が進まないなどの困難を伴う.そこで本年度は,川口等が提案した膜構造大変位解析手法を,弾性梁大変形も扱えるよう発展させた.本手法では,膜を不安定トラス構造で,弾性梁を回転ばねで繋がった一連のロッド部材でモデル化し,収束計算により大変位追跡を行う. 単純な構造物を対象とした数値解析により本手法の有用性を検証した後に,円筒膜を対象とした変位制御による収納・展開挙動の数値解析を行った.その結果,円筒膜のみの場合に比べ,弾性梁を付与する方が収納展開時の形状再現性が良くなることが分かった.また,本手法により,膜の状態を簡易的に推定可能であることが分かった. 膜の大変位挙動を,すべての領域において常に安定化させることは困難である.膜の一部分の,不定性による可動領域をある範囲に収めるよう設計する方が現実的と考えられる.そのための簡易解析手法として本手法は有用である.一方,展開構造物の使用フェーズを展開過程・運用過程に分けると,異なるフェーズに一貫して対応可能な数値解析技術は有用である.本年度の研究成果により,数値解析技術の確立の見通しを得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案している概念構造物の設計にあたっては,展開時の挙動推定技術および展開後の構造特性推定技術が重要である.一方,提案概念を試験体実験で検証するには,パラメータ設定のために何らかの指標が欠かせないことが明らかになってきた.そこで本年度は,試験体実験より先に解析技術の確立を行うこととした. 研究実績の概要にて述べているように,本手法により展開過程における膜の状態を簡易的に推定可能である.数値計算例より,例えば,大変位過程でひずみエネルギーの極大値を経る,いわゆるスナップ・スルー現象が観察されるなど,新たな知見も得られている.本研究の目的の一つである解析理論の確立がおおむね達成できていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を受けて,今後はまず数値解析技術の性能向上を目指す.具体的にはより精細な構造モデルを実用的な時間で数値解析できるよう,プログラムの改良を行う.また,展開後の構造物の静解析・動解析を実施する. 続いて,数値解析によるパラメータスタディを実施し,それを確認するための試験体実験を行う.次年度は研究計画最終年度でもあることから,研究成果の総括を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
数値解析を行うための商用ソフトウェアのサポート料を支払う.実験を行うため,試験体材料と実験治具を購入する.研究成果公表のため,学会発表と論文投稿,および報告書を作成する.
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