研究課題/領域番号 |
23760766
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
宮村 典秀 明星大学, 理工学部, 准教授 (50524097)
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キーワード | 補償光学 / リモートセンシング / 人工衛星 / 光学 |
研究概要 |
前年度に引き続き,デフォーマブルミラーを用いた波面制御技術の研究を行った.本研究では観測画像を用いて,高速で画像の推定と光学収差およびミスアライメントによる波面の歪みを補整するための波面制御をおこなう.画像処理による推定を行う際に,デフォーマブルミラーの特性を高い精度で再現する数学モデルを構築し,このモデルを用いて制御アルゴリズムを構築した。このとき、光学収差を表現する基底関数を検討し,Zernike多項式を用いた手法を採用した.実験室における特性評価実験では,波面センサを用いてデフォーマブルミラーの応答性、回折効率、波面の空間分解能など、補償光学の性能にかかわる基本性能の評価を行った。 次に,合成開口望遠鏡システムの構築に向けた光学系の設計を行った.Rockheed Martin社のテストモデルSTAR-9に代表される合成開口望遠鏡は、複数のカセグレン望遠鏡の像を1つに集めることで仮想的な大口径望遠鏡の像を得る。この課題の実現のために,問題を2つのステップに分割した。まず、すべての小望遠鏡の光路と結像位置を大まかに合わせる粗動ステップ、ここでの調整のために、小望遠鏡の主鏡以降の複雑な光学系が必要となる。次に、主鏡瞳座標系における収差の推定と補正である。ハードウェア上の複雑さが要求されるのは第1ステップであるが、本研究で焦点を絞って取り組む対象は第2ステップである。そこで、コヒーレント光と干渉観測を利用して、主鏡位置での光波の直接測定を利用し、測定データをデジタル処理で合成することにより、光学系による合成に伴うシステムの複雑化を避け、波面推定と補正のみを評価する実験系を構築する必要がある。今年度はこの光学系の実現に向けて,光学設計ソフトウェアを用いた,光学設計を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では1年目に機械学習手法に基づくデフォーマブルミラーの制御手法の研究を行い,2年目に合成開口望遠鏡を用いた実験システムを構築し,実証実験を行う予定であった.1年目の機械学習手法の研究はほぼ計画通り進んだが,2年目の実験システムの構築の段階で,実験システムの設計,特に光学系設計と電子系設計に時間がかかり当初予定した期間内に研究を完了することができず,実験のための光学系設計までを光学設計ソフトウェアを用いて行った.研究の推進が遅れた要因の一つは,平成24年度に大学を移籍したため,研究環境の整備に時間を要したことである. しかしながら,実験計画に大幅な見直しはなく,現在までに実験装置の設計も進んでおり,研究環境も整ったため,平成25年度には当初の計画に沿って,光学系,センサモジュール等,合成開口望遠鏡システムの構築に必要な物品を購入して実証実験を行う.さらに,研究成果をまとめて国際学会での発表,論文発表を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まず,光学設計ソフトウェアを用いた実験系の光学系の設計を完了させる.その上で,補償光学技術を導入した合成開口望遠鏡システム実験を行う.研究室に既存の浜松ホトニクス社製液晶空間光変調器(Liquid Crystal on Silicon-Spatial Light Modulator、LCOS-SLM)を用いて収差を発生させる。LCOS-SLMは離散的な波面制御が可能であることを利用し、合成開口望遠鏡における,それぞれの望遠鏡に異なる波面収差を発生させる。LCOS-SLMを利用することで真値がわかっている波面収差をデフォーマブルミラーを用いた補償光学系によって、推定し制御することによって、推定・制御精度の評価を行う。LCOS-SLMの最大約60Hzの制御周期を利用して、補償光学系の応答速度を評価する。デフォーマブルミラーは回折を抑えるために連続な波面を形成する。これによって、望遠鏡ごとの不連続な収差を補正する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には当初の計画に沿って,光学系,センサモジュール等,合成開口望遠鏡システムの構築に必要な物品,及び制御用コンピュータを購入して実証実験を行う.さらに,研究成果をまとめて国際学会での発表,論文発表を行う予定である.
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