最終年度は,合成開口望遠鏡の実現において,個々の望遠鏡の位相調整に不可欠な補償光学系について,補償光学実験システムを構築し,人工衛星によるリモートセンシングにおける補償光学技術の実証実験を行い,総合的な実現性を検証した.具体的には,2つの項目について研究を行った.まず,人工衛星の観測において,軌道運動により観測対象が常に変化していく中で,観測画像から波面収差を推定する手法の研究を行った.前年度までに研究を行った拡張Phase diversity法では,デフォーマブルミラーを用いて,様々なZernikeモードの波面収差を光学系に与えることで,特定の収差モードの推定精度の向上をさせたが,今年度は,画像の移動量を波面の傾きとしてモデル化し,さらに波面収差と同時に移動量を補整する手法とした修正を行った.これによって,軌道運動を伴う人工衛星においても,拡張Phase diversity法の利用を可能とした.次に,補償光学実験システムの設計と構築を行い,研究成果の実証実験を行った.前年度までに取り組んだ,合成開口望遠鏡の数学モデルとデフォーマブルミラーのモデル化と制御手法を活用して,光学ベンチ上に2次元の観測ターゲットを用意し,波面の歪みを与え,拡張Phase diversity法を利用した波面推定を行った.その結果を用いて,デフォーマブルミラーの制御により収差を補整し,取得した画像の画質により総合評価を行い,画質の向上を確認した. この研究を通して,合成開口望遠鏡の数学モデルの構築,デフォーマブルミラーのモデル化および制御手法,観測画像を用いた拡張Phase diversity法による波面推定,波面推定における人工衛星の軌道運動補整,合成開口望遠鏡に向けた補償光学実験システムの構築を行った.今後はこの研究の成果を,人工衛星搭載センサの開発に活用する予定である.
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