研究課題/領域番号 |
23760767
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今村 太郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30371115)
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キーワード | 数値流体力学 |
研究概要 |
本研究は、任意の複雑形状に対して高速かつロバストに流体計算を行い、その知識を航空機概念設計に迅速に反映させるための数値流体解析法、概念設計指向の数値流体解析法を構築することが目的である。第1段階では、計算機環境の整備および、概念設計指向数値流体解析法の構築を行う。第2段階では、概念設計指向数値流体解析コードの高度化を実施する。乱流モデルの組み込みや並列計算に向けた検討など、航空機概念設計への適用を視野に入れた改良を実施する。第3段階では、概念設計指向数値流体解析法の成果を環境適合型革新的航空機の概念設計に適用する。 平成23年度は、主に第1段階の課題を実施し、本研究が目指すコード開発の基礎となる部分の構築が完了した。平成24年度は主に第2段階となるプログラムの高度化に取り組んだ。当初は、乱流モデルの組み込みや並列化を予定していたが、より複雑な物体周りの解析を行うための格子生成プログラムの改良や、高レイノルズ数流れの解析を視野に入れた境界条件の改修の必要性があったことから、これらの課題に優先的に取り組んだ。これらの改良は終了し、複雑かつ複数物体の取り扱いが容易にできるプログラムが構築できた。現在は、乱流モデルを実装中である。また、研究室内の学生にプログラムを積極的に利用してもらうことで、適用範囲の拡大、修正箇所の明確化が日々進展している。発表に関しては、米国航空宇宙学会主催のCFD Conference(2013年6月開催)での口頭発表が受理された。また国内の研究会・講演会で合計4件の口頭発表行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、概念設計指向数値流体解析法(PDOC)の構築を主として行い、本年度の大きな目標であった、完全自動格子生成するプログラムの作成及び、オイラー方程式&ナヴィエ・ストークス方程式に基づく流体ソルバーの構築ができた。いずれも2次元版と3次元版の基礎となるコードが完成できた。平成24年度は、昨年度の結果を踏まえ、プログラムの高度化に取り組んだ。格子生成プログラムについては、複雑な形状の取り扱いを目的として、複数ファイルで定義された複数物体周りの解析が実施できるようになった。物体毎に最小格子幅、境界条件の設定ができるようにすることで、柔軟に計算を行う事が出来る。更に流体現象に適した格子生成を目的として,後流領域への自動格子生成やRefinement Boxの追加機能を実装した。流体解析プログラムについては、高レイノルズ数流れの解析を視野に、Immersed Boundary Methodを用いた境界条件の改良を行った。現在はこれに基づき、乱流モデルの実装を行っている。また、物体に働く力の推算方法の影響についても定量的に評価を行った。他にもDual Time Step法を用いた陰解法を実装し、非定常流体計算が可能となった。 研究の進捗に伴い、明らかになった問題に対して研究が十分に進捗したと考えられる。研究開始時に予定していた、乱流モデルの組み込みついても、目途が立ってきていることから、当初の予定通りに研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、乱流モデルの組み込みや並列化を視野に更なる高度化に取り組むと共に、本コードを環境適合型革新的航空機の概念設計への適用を視野に改良を行う。 高レイノルズ数流れにおける剥離のない流れ場の解析は、航空機の巡航性能推算には欠かせない機能であるが、直交格子法を用いた流体解析では、壁面近傍に物体適合格子がないために、適切な壁面乱流モデルを実装する必要がある。これまでの、レイノルズ数平均ナヴィエ・ストークス解析は、既存の乱流モデルを利用するために壁面鉛直方向に細かくかつ連続的に生成された計算格子が求められ、格子生成に対する制約が大きかった。そのような格子を作成して計算するアプローチをとった研究が存在するが、結果的に直交格子法が本来有する格子生成や流体計算上のメリットが損なわれることが明らかになってきている。そこで、本研究では、格子生成、乱流モデルのバランスを取りながら、両者を改良する方針をとることによって、格子生成の負荷を減らし、高レイノルズ数流れ場解析を可能とするソルバーの開発する。物体壁面付近の格子が従来の乱流モデルで要求される細かさより粗くできる壁モデルを採用することにより、高レイノルズ数流れ解析が可能となる。本モデルが完成することにより、従来よりも高速かつ簡便に複雑形状の流体計算が可能となり、概念設計への展開が進むと考えられる。計算結果については、数値流体力学のベンチマーク問題との比較を通じ検証するとともに、本コードを環境適合型革新的航空機の概念設計への適用を視野に拡張する予定である。また計算規模が大きくなることから、プログラムの並列化に挑戦する予定である。 研究成果については、論文に取り纏め、積極的な発表を行うように心がける予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
350千円:米国航空宇宙学会(CFD Conference)口頭発表(論文アクセプト済み) 350千円:ワークステーション(DELL) 100千円:論文投稿費用 150千円:国内学会参加費用(3名) 125千円:ソフトウエア更新料
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