本年度は主に3点に取り組んだ。 はじめに、複雑な物体形状周りにおける定常乱流の計算を可能とするために、直交格子に適した定常乱流計算手法を開発した.埋め込み境界法にSA乱流モデルから導かれた壁関数を組み合わせ,境界層解像に必要な格子数の増大を抑えた.検証のために平板を用いた計算を行った.物体壁面と格子が同一方向の場合は壁から一点目のy+が120程度で乱流境界層が解像可能であり,壁面を格子に対して傾けた場合でも一点目のy+が30程度であれば乱流境界層を解像可能であった. 続いて、非構造直交格子において高次精度でセル表面の変数値を補間する方法を構築した.非構造格子では隣接するセルの情報にしか簡単にアクセスできないが,ここでは直交格子の利点を生かし,等間隔領域において勾配値を高次精度化した.1次元および2次元の検証問題において,新しく構築した手法を用いた場合,従来用いられてきた2次精度や3次精度の手法を用いた場合よりも大幅に解像度が向上した.1階勾配値のみを4次精度に向上させる方法は,補間スキームを完全な空間5次精度にする方法と比べ,検証問題の結果では大きな差異が見られなかった.また,ハンギングノードにおいては若干精度が低下するものの従来の手法より良い移流結果が得られ,また顕著な非物理的散逸や反射も生じないことが確認された.新しく提案した計算法は,計算時間については従来の3次精度風上バイアス法と比べ,10[%]程度の増加に留まったことから、構築したスキームは精度の演算量の両面からバランスの取れた実用的な計算手法である. 最後に、実用計算に向けたプログラムの高速化に取り組んだ.単CPUでの実行性能向上と共に、OpenMPによる並列化に取り組み,ワークステーション上での三次元計算が実用的な時間内で可能となった.
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