本研究は火星大気突入時に飛翔体周りで生じる熱的緩和・化学反応の非平衡過程に着目して研究を行った。研究期間内には予備段階としてアーク加熱風洞を用いたCO2プラズマ流の光学計測を実施し、ファイバアレイを用いた多点同時分光計測システムの開発やCO2プラズマ流の特性に関する研究を行ってきた。特に最終年度の成果としてはCO2プラズマ流に対して面積強度法を適用することで温度の空間分布特性を高精度に取得することに成功している。この結果はCFD計算で用いられる熱化学反応モデルの検証に非常で有用であると考えられる。今後はCO2プラズマ中で主要な発光種であるCO分子に対して面積強度法を適用する予定である。 また本研究の初年度に、火星大気突入時の衝撃層環境を模擬できる極超音速衝撃波管を開発することができた。そして最終年度は、衝撃波管観測部に極短時間多点分光計測システムを構築して衝撃波背後の輻射光の分光計測を実施した。本計測システムの適用により、スペクトルの空間分布特性が高精度に取得することが可能となった。また計測スペクトル中においてはCN分子の発光が支配的であることが明らかとなった。計測スペクトルにスペクトルフィッティング法を適用することにより衝撃波背後の回転振動温度の空間分布特性を取得した。さらに実験と同じ条件でCFD計算を行い、実験結果と比較を行った。これより衝撃波直後の領域においては計測した回転温度は計算よりも著しく低くなり、一方で振動温度は計算と実験値ともに良好に一致していることが明らかになった。衝撃波後方領域においては、実験値と計算値はともによく一致していることがわかった。今後さらに実験的検証を行い、CFDで用いられている熱化学反応モデルの精度を向上していく予定である。
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