研究課題/領域番号 |
23760777
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北澤 大輔 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30345128)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 揚網 / 可撓性ホース / 水槽模型実験 / 数値解析 |
研究概要 |
本研究の目的は、定置漁業において、箱網に取り付けた可撓性ホースに給排気を行うことにより揚網作業を行うシステムを提案し、波浪や流れによる可撓性ホースへの流体力、および可撓性ホースの係留力を水槽模型実験と数値解析により明らかにすることである。平成23年度は、可撓性ホースネットを1本のホースと見立て、小型の造波曳航水槽において、給排気によるホースの浮沈実験を行った。実際の可撓性ホースの1/120に相当するホース模型を製作し、給排気によって浮沈させ、ホースの運動を造波曳航水槽側面の窓よりデジタルビデオカメラで計測した。得られた画像から、ホース上の7点の座標を読み取り、ホースの運動を解析した。ホースへの給気による揚網実験の結果より、ホースが、空気の注入とともに、魚を徐々に追い込む形状でS字状に浮上する様子を確認した。また、可撓性ホースの形状が給排気によって変化することを考慮し、数値解析によって一様流中に置かれた可撓性ホースへの流体力を推定した。流速の増加とともに可撓性ホースへの流体力は増加したが、浮上時の可撓性ホースの形状はほとんど変化しなかった。これは、可撓性ホースへの流体力に比べ、可撓性ホースの浮力、沈力が卓越していたためである。さらに、静水中で可撓性ホースが半分浮上した状態では、ホースの形状がカテナリー曲線で近似できることが示され、綱や係留ラインの解析で用いられる手法が適用可能であることが明らかとなった。本研究によって、より大型の水槽で行う実験のための基礎データとともに、より詳細な数値解析モデルの開発のための基礎的な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、当研究所の海洋工学水槽(長さ50m、幅10m、深さ5m)で、定置網模型および可撓性ホースネット模型を設置し、波浪と流れを与えて運動や係留力を計測する実験を行う予定であった。しかし、東日本大震災に伴う電力不足により、特に回流に多くの電力を要する本水槽での実験を断念し、小型造波曳航水槽(長さ7m、幅1m、深さ0.5m)での実験に切り替えた。小型造波曳航水槽においても有益な結果が得られたが、より高精度な計測を行うためには海洋工学水槽での実験が不可欠であり、平成24年度に実施することとなった。そのため、研究の進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に実施できなかった海洋工学水槽での模型実験を実施する。まず、縮尺比1/100の可撓性ホースネット模型を製作する。次に、同じ縮尺比を持つ定置網模型と可撓性ホースネット模型を水槽に設置する。波浪場と流れ場を与え、可撓性ホースネットを浮沈させたときの運動、張力、係留力を計測する。本水槽模型実験で得られた結果を数値モデルの検証に用いるとともに、平成23年度に小型造波曳航水槽で行った実験の結果と比較し、模型の縮尺影響を把握する。さらに、可撓性ホースネットの運動、張力、係留力を明らかにするために、可撓性ホースネットの剛性、内部の空気流れ、膨張、収縮による浮力変化、形状変化に伴う流体力の変化を組み込んだ数値解析モデルを構築する。波浪場、流れ場における可撓性ホースネットの運動、張力、係留力に関して、水槽模型実験の結果と比較することによって、数値解析モデルの妥当性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費としては、可撓性ホースネット模型および定置網模型も含めた係留システムの模型の製作に用いる。また、可撓性ホースネットの運動、張力、係留力を計測するための消耗品を計上している。旅費としては、平成23年度の成果も含めて、ブラジルで開催される第31回海洋工学と極地工学に関する国際会議において論文を発表するとともに講演を行う。
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