本研究の目的は、定置漁業において、可撓性ホースをレンガ状に整形したネット(以下、可撓性ホースネット)を箱網の底部に取り付け、給排気を行うことにより揚網作業を行うシステムを提案し、波浪や流れによる可撓性ホースネットへの流体力、可撓性ホース間に働く張力、係留力を水槽模型実験と数値解析により明らかにすることである。まず、可撓性ホースネットを1 本のホースと見立て、造波曳航水槽において、給排気によるホースの浮沈実験を行った。実際の可撓性ホースネットの1/120 に相当するホース模型を製作し、給排気によって浮沈させ、ホースの運動をデジタルビデオカメラで計測した。また、ホースの魚を捕獲する側にロードセルを配し、係留力を計測した。その結果、ホースが、空気の注入とともに、魚を徐々に追い込む形状でS 字状に浮上する様子を確認した。また、可撓性ホースネットの形状が給排気によって変化することを考慮し、数値解析によって一様流中に置かれた可撓性ホースネットへの流体力を推定した。流速の増加とともに可撓性ホースネットへの流体力は増加したが、浮上時の可撓性ホースネットの形状はほとんど変化しなかった。これは、可撓性ホースネットへの流体力に比べ、可撓性ホースネットの浮力、沈力が卓越していたためである。さらに、静水中で可撓性ホースネットが半分浮上した状態では、その形状がカテナリー曲線で近似できることが示され、綱や係留ラインの解析で用いられる手法が適用可能であることが明らかとなった。また、可撓性ホースネット内の張力は、半分浮上した状態で最大となり、係留力の2倍程度であることが数値解析により示された。本研究では、可撓性ホースネットは剛性を持たないものと仮定したが、今後は、少なくとも内部に給気されている場合には剛性を考慮する必要があると考えられる。
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