船体構造の安全性・信頼性向上を目的とし,広範囲のひずみ測定が可能な分布型センサを用い、船体構造に負荷される荷重を逆解析によりリアルタイムに推定し,各部応力を再構成する手法を研究する.これまでの研究をもとに適用性をさらに高めるため次の課題が挙げられる.(1)動的問題への適用,(2)湾曲面・複数面への適用,(3)局所的な荷重などへの適用,(4)実験的な検証,(5)残存強度・寿命予測手法との連携,である. 初年度は,(2),(3),(4),(5)に取り組み,分布型光ファイバセンサの情報をもとに,湾曲面・複数面を持つ構造に負荷される局所的・分布的な荷重・応力を逆解析によりリアルタイムに推定・再構成し,さらに各部位の残存強度・寿命予測を可能とする手法の研究を行った.全長6mのCFRP製ボックス構造の構造試験において,光ファイバセンサの測定情報をもとに負荷された荷重の推定を行った.逆解析用FEMモデルは,順解析から求められた300点以上のひずみ値の実験値との比較によって行われ,極めて良い一致を示すことからその正確性が示された.測定されたひずみ値からの逆解析による荷重同定も良好な精度を示し,再構成された応力による疲労評価の可能性を示した. 最終年度は,引き続き(2)~(5)の検討を深めるため風洞模型試験を用いた分布荷重同定を行った.模型は約1mで,母翼,フラップ,スラットから構成される.光ファイバセンサを各構成要素の長手方向に接着固定した.アルミ合金製模型のFEMモデルを作成し,荷重として測定圧力を与え,測定ひずみとシミュレーションの結果を比較した.傾向として一致し、今後モデルを精緻化することでより正確な検証が可能であると考える.測定ひずみ値を用いた荷重同定では,おおむね良好な推定ができた.風洞試験における光ファイバセンサによる本格的なひずみ測定および荷重同定は世界初の試みである.
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