船底より気泡を吹き出す空気潤滑法は、船体へ付加する突起物を必要とせず、かつ、船体抵抗の大半を占める摩擦抵抗の低減量が大きいため、実船への適用も始まった。一方で、吹き出された空気と船体周り流れの干渉を含む二相流れを解析し、抵抗低減量を安定に精度良く推定できる手法は確立されておらず、早急な解決が必要とされていることから、気相・気泡を含む二相流れモデルと数値シミュレーションによる流場の推定手法を構築した。まず、海上技術安全研究所で開発中の、船体周り流れに対し精度・実績を有している一相の非圧縮性に基づくソルバーを、体積率に基く気液混相一流体による気液二相に拡張し、気相の体積率の移流方程式は、界面捕獲に優れたレベルセット法により解き、質量保存則を満たすようレベルセット関数を補正した。開発した手法を気泡上昇問題に適用し、二相計算の検証を行った。次に、気泡の運動について、運動方程式は支配的要素のみを考慮し、揚力と抗力、浮力項等とした。開発したモデルを気泡上昇問題に適用し、検証を行った。最後に、気相・気泡を組み合わせたハイブリッドモデルを構築した。気泡数は気相・気泡のハイブリッドモデルに適した数とし、気泡の運動計算を行いつつ、気相に気泡が含まれる場合、気相の移流方程式に時間微分項として付加した。開発した手法を複数気泡上昇問題に適用し、気相・気泡が混在しても、安定した計算ができることを確認した。今後は、構築したモデルと計算手法の検証例を増やすことにより、実用への完成度を高めていく予定である。
|