研究課題/領域番号 |
23760796
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
実松 健造 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 研究員 (40462840)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 希土類 / 鉱床 / 吸着 / 花崗岩 / 風化 / 資源探査 |
研究概要 |
ミャンマー国南東部には白亜紀~古第三紀の花崗岩が南北に分布しており、温暖・湿潤な気候で化学風化を被っているためイオン吸着型希土類鉱床の存在が期待される。本地域の花崗岩の地球化学的特徴と希土類資源ポテンシャルを明らかにするために、2011年12月にDawei市とMyeik市周辺において野外調査を行い、花崗岩および風化花崗岩試料を採取した。全岩化学組成分析の結果、花崗岩の希土類含有量は72~414ppmであり、平均値が159ppm、中間値が132ppmであった。磁鉄鉱系花崗岩の方がチタン鉄鉱系花崗岩よりもやや希土類に富む傾向が見られたが、磁鉄鉱系花崗岩は相対的に富む一方で、チタン鉄鉱系花崗岩には相対的に重希土類に富むものが見られた。風化花崗岩の希土類含有量は26~806ppmであり、平均値が178ppm、中間値が140ppmであった。花崗岩と風化花崗岩の希土類含有量を比較すると、風化によってわずかにしか希土類が濃縮していないことが分かる。風化花崗岩のCe異常は0.44~11.9であり、正のCe異常が卓越しているため、風化によって希土類が十分に移動していないものと推測される。風化花崗岩中の吸着性希土類濃度を定量するために、硫酸アンモニウム水溶液を用いて希土類を抽出した後にICP-MSを用いて分析を行った。その結果、風化花崗岩中の希土類の5.9~54%のみしか吸着していないことが分かった。イオン吸着型鉱床では一般に50%以上の希土類が吸着していることが求められるため、調査地域の風化花崗岩はイオン吸着型鉱床を形成していないことが分かった。しかしながら、Myeik市周辺には重希土類に富みながら比較的希土類を吸着している風化花崗岩が確認されたため、今後、花崗岩の鉱物学的特徴を調べ、イオン吸着鉱の成因を明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミャンマー南東部で試料採取を行い、全岩化学分析、元素の抽出実験、研磨薄片の作成、岩石記載の大部分を終わらせることができた。研究所内で複数の実験室の移動と工事が行われたために実験や分析が不可能な期間があったために、当初の計画以上に研究を進めることはできなかったが、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ミャンマー最南東部またはミャンマー中央部で試料採取が可能と思われるため、これらの地域の花崗岩および風化花崗岩を採取する。前年度と同様に、全岩化学分析、元素抽出実験、岩石学的・鉱物学的記載を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ミャンマー南東部および中央部の花崗岩地域で野外調査を行い、花崗岩と風化花崗岩試料の採取を行うための海外出張費、現地の地質技師への謝金、岩石試料の輸送代などに研究費を使用する。これらの試料を切断、破砕・粉砕した後、全岩化学組成分析を外注するために研究費を使用する。また、研磨薄片の作成も外注するために研究費を用いる。風化花崗岩からの元素抽出実験に使用する薬品、容器、その他の実験器具が足りなくなった時に不足するために研究費を使用する。昨年度以降の研究成果を学会等で発表したり、本研究に関連する情報収集のための会議等に出席したりするための出張費や会議参加費に本研究を使用する。昨年度以降の研究成果を含む印刷物の別刷代やカラ―印刷代に本研究日を使用する。
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