研究課題/領域番号 |
23760796
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
実松 健造 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 主任研究員 (40462840)
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キーワード | 希土類 / 鉱床 / 花崗岩 / 風化 / 吸着 / 資源探査 / ミャンマー |
研究概要 |
ミャンマー国のイオン吸着型希土類(REE)鉱床の資源ポテンシャルを調べるために、同国中央部および南東部から得られた花崗岩41試料とその他の火成岩27試料について全岩化学分析を行った。花崗岩のREY(REE+Y)含有量は39~770ppm程度であり、その他の火成岩は花崗岩にくらべREYに乏しかった。Kayin州Thandaung地域の花崗岩のREY含有量は251~770ppmと比較的他の花崗岩よりもREYに富むことが分かった。これらの花崗岩はアルミナ飽和度[モル濃度でAl2O3/(CaO+Na2O+K2O)]が1.1以下であり、P2O5含有量は0.04~0.15%と比較的低い値であった。特に、HREEに富む花崗岩4試料は共通してSiO2含有量>73%と結晶分化作用が進んでおり、P2O5含有量<0.06%とリンに乏しい特徴を持つことが分かった。これまでの当該研究の結果により、このような地球化学的特徴を持つ花崗岩は難溶性のREEリン酸塩に乏しく、イオン吸着鉱を形成しやすいことが分かっている。これらの結果から、Thandaung地域はイオン吸着型REE鉱床に必要な原岩花崗岩を有する地域であり、花崗岩の風化殻が十分に(厚さ10m以上)発達していれば、REE資源ポテンシャルが高い地域であることが分かった。この地域の花崗岩の地球化学的研究とREE鉱物の記載は引き続き平成25年度の当該事業で行う。 Thandaung地域の野外調査は安全上難しいため(地雷が埋まっている箇所があるため)、2013年1月17日~2月3日にかけて、Thandaung地域よりもさらに広範囲でミャンマー中央部の野外調査を行った。試料採取は主にMon州とMandalay管区で行った。花崗岩を中心に火成岩試料を系115個採取した。これらの岩石試料の化学分析や記載は、引き続き平成25年度の当該事業において行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミャンマーでの野外調査や岩石試料採取は困難であるが、カウンターパートである現地人や共同研究者の助けにより、順調に進んでいる。特に、上述したThandaung地域の花崗岩は中国南部のイオン吸着型REE鉱床の原岩花崗岩と類似した地球化学的特徴が確認されたため、このタイプの鉱床は中国に以外にも存在する可能性を示唆している。直接実施調査を行うことはできなかったが(地雷のため)、本地域の異なる花崗岩露頭から地球化学的特徴が異なる17個の花崗岩試料を採取することに成功したため、マグマの結晶分化によりHREEに富む花崗岩が形成された過程を研究することができる。 当該年度の野外調査がやや遅れて2013年1月から2月となったが、結果的に火成岩試料138個を広域的に採取することに成功した。これらの化学分析を行うことにより、Thandaung地域のようにイオン吸着型REE鉱床として有望な花崗岩地域の分布をさらに広域的に(Mon州およびMandalay管区周辺において)知ることができる。また、モン州においては、漂砂型モナザイトを含む試料を手に入れることができた。漂砂型REE鉱床はイオン吸着型鉱床と対照的であり、同一地域に形成されることはないため、本研究を遂行する上で重要な材料となる。
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今後の研究の推進方策 |
上述したThandaung地域が当該研究において最もREE資源ポテンシャルが高い地域であるため、これらの花崗岩の研磨薄片を作成し、顕微鏡観察による記載とREE鉱物の特定を行う。同時に、当該年度に新たに採取した火成岩試料138個の全岩化学分析を行う。この分析結果により、新たにThandaung地域のようにREE鉱床として有望な花崗岩が確認されたら、それらの研磨薄片も作成する。また、ジルコンのU-Pb年代やPb同位体などにより、REE鉱床として有望な花崗岩の成因や地質背景を議論するためのデータを取得する。 全岩化学組成を基にして、必要であればミャンマー中央部における野外調査・試料採取を早い時期に行う。野外調査を行うにあたって危険な地域においては、現地人から試料を採取してもらう。 平成25年度は室内実験・分析を行う環境が変化するため、風化花崗岩からのREE抽出実験とその元素濃度分析については最小限にとどめる。年度後半は当該事業の地球化学データを取りまとめ、最もREE資源ポテンシャルが高いと考えられる地域を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度(平成24年度)の広域野外調査が予想以上に順調に進み、花崗岩を含めた火成岩試料が138個も得られたため、昨年度の若干の残予算を今年度(平成25年度)の全岩化学組成分析に用いる。全岩化学組成分析の仕様・内容については当初の予定通りであり、分析個数が増えることとなる。
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