研究概要 |
析出物/マトリックス界面の点欠陥に対するシンク効果を調べる為に、Cu-Cr-Zr {Cu-0.9Cr-0.14Zr (wt.%)}合金とCu-Cr{Cu-0.9 (wt.%)}合金について超高圧電子顕微鏡によるその場観察を再度実施した。 Cu-Cr-Zrについては873 K, 4 h、 Cu-Crについては873 K, 1 h過時効しCrリッチ析出物を平均直径5 nm以上に粗大化した試料について、室温、373 K, 473 K, 673 Kの温度で 加速電圧1250 kV、照射量2 dpa(損傷速度1 ×10‐3 dpa/s)までの電子線照射その場観察を行った結果、両合金で室温から473 Kで主に格子間型の転位ループが形成された。Cu-Cr合金では、室温から473 Kで主に格子間型の転位ループが形成された。その核生成サイトは析出物/マトリックス界面であり、室温では析出物を挟むような2面で転位ループが形成した。室温および473 Kでは転位ループの一次元運動が観察された。673 Kでは転位線の運動のみが認められた。一方、Cu-Cr-Zr合金では、室温,373 Kで転位ループが主に析出物/マトリックス界面で核生成し、一次元運動を行いつつ、転位ループが格子間原子を吸収して成長した。その組織発達は、主に析出物近傍でみられ、0.1dpa程度の照射の後、転位がタングルし始めるとともに粗大化した転位ループもしくは転位線が格子間原子を吸収し、付近に積層欠陥四面体が高密度で生成された。200℃では積層欠陥四面体は形成されず、転位ループの生成、成長の後、転位線となり長距離の運動を行うのが観察された。 これらの結果から、Cu-Cr,Cu-Cr-Zr合金ともに定性的に析出物/マトリックス界面が強い点欠陥および点欠陥集合体のシンクとして作用することが明らかになった。
|