研究課題/領域番号 |
23760805
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古川 勝 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80360428)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | プラズマ・核融合 / 境界層 / 数理物理 / 特異摂動 / 波動 |
研究概要 |
本研究課題は,磁化プラズマの抵抗性磁気流体力学的(MHD)安定性問題に対する代表的方法論の1つであった漸近接続法(境界層理論)が適用不可能または現実的に困難な状況があることを指摘し,それらの困難を除去することができる,当該研究者等が開発した新しい接続解法を更に発展させるものである.特に,(1)新しい接続解法をトロイダルプラズマに適用し,ITER(国際熱核融合実験炉)等の超高温の核融合プラズマにおける抵抗性MHDモード安定性解析を正確に行えるようにすること,(2)抵抗性MHD不安定性等による磁気島成長と飽和,およびプラズマ回転や外的不整磁場との相互作用に関する弱く非線形な現象を扱えるように拡張することを目的としている.いずれもITER等の超高温核融合プラズマの閉じ込め性能を予測し,さらに改善するための最重要課題となっている.平成23年度は,トロイダルプラズマへの適用を行う予定であったが, 当該研究者等が開発した新しい接続解法の利点が強調され,かつ実験解析の意味でも意義深い,有限Larmor半径効果を含めたモデルへの拡張を行うことが先決であると考え,その研究を行った.有限Larmor半径効果を含めると,反磁性ドリフトが生じ,Alfven共鳴面と有理面の縮退が解ける.どの程度の距離離れるのかは,問題が解けてから決まるので,従来の漸近接続法で扱うことは本質的に無理であり,有限幅の内部領域を用いる新しい方法の利点が生かされる.また,実験においても,テアリングモードによる磁気島は電子反磁性ドリフトの方向に回転していることが通常であり,この回転を取り込む意味でも,有限Larmor半径を含める拡張は意義がある.平成23年度には,有限Larmor半径効果を含めたモデルに対し,これまでに開発してきた接続解法を拡張した.また,固有値問題を解くコード開発を行い,初期的な計算結果を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は,当初,これまでに円柱配位を用いて開発してきた方法論を,トロイダル配位に拡張する予定であった.しかし,対象とする境界層問題に関し,有限Larmor半径効果を含めた場合の拡張は,現実的なプラズマの安定性解析に適用する工学的意味においても,物理としても,大変興味深いことに気付いた.したがって,まずは円柱配位のままで,有限Larmor半径効果を含めた定式化およびコード開発を行った.学会発表までは行ったが,論文誌への発表には至っていない.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に進めた,有限Larmor半径効果を含めた定式化およびコード開発に関し,論文発表を行う.次に,トロイダル配位への適用,コード開発に進む.トロイダル配位での計算には,これまでよりも計算機資源が必要となるので,早急に結果を得るために,共同研究先のPCクラスタあるいは大型計算機を使用する世知恵である.これらの成果を,日本物理学会,アメリカ物理学会等の国内・国際会議で発表すると共に,論文執筆を行う予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は,予定よりも8736円多く使用したが,平成24年度にこの金額を相殺するため,旅費を少なくする予定である.
|