研究課題/領域番号 |
23760810
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
佐竹 真介 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (70390630)
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キーワード | 新古典輸送 / 新古典粘性 / 核融合炉 / モンテカルロ法 |
研究概要 |
平成24年度の主な成果の一つ目は、トカマクに非軸対称摂動磁場を重畳した場合の軸対称性の破れに起因する新古典トロイダル粘性(NTV)の数値シミュレーション研究の進展である。昨年度までの径電場なしの場合での計算コードのベンチマークに引き続き、NTVの径電場に対する依存性を研究した。そこで、従来のバウンス平均ドリフト運動論を使ったモデルでは見落とされていた、パッシング粒子が径電場が大きい時に摂動磁場と新たな共鳴条件を満たすことで共鳴有理面の両側にNTVトルクのダブルピーク構造が現れることをシミュレーションで発見し、その共鳴条件について理論的に説明することにも成功した。 2つ目の主な成果はLHDバイアス実験における新古典ポロイダル粘性(NPV)の定量的評価である。この研究は昨年度から継続して研究しているが、シミュレーションで見られるポロイダルマッハ数(Mp)1付近のNPVの径電場に対する非線形な振る舞いが、圧縮性ExBフローによってMp~1で磁気面上の密度・パラレルフロー分布の変動が大きくなることによって生じることがわかった。その結果、ExBフローの非圧縮性を仮定している解析解よりNPBのピーク値が大きくなり、またこの事が実験観測とシミュレーションの定量的な一致に重要であることが示された。 3つ目の成果は、新古典輸送コードを現在核融合研で概念設計を進めているヘリカル型原型炉FFHR-d1の新古典熱輸送の定量的予測に応用したことである。FFHRのMHD平衡配位では、高β化に伴う磁気軸シフトを抑制しないと新古典熱輸送がα粒子による自己加熱を超えてしまい、定常炉としての条件を満たせないことを発見し、新たにコイル電流の調整によって磁気軸シフトを抑えた配位を考案して新古典熱輸送を自己加熱より低く抑える事ができることを示した。この知見は今後の原型炉設計活動に生かされる有益なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新古典粘性の計算法については、トカマク、ヘリカルの両方に使える汎用的な計算手法の開発とベンチマーク、実験解析への応用といったVerification and Validation (V&V)が順調に進んでおり、今後より多くの実験解析や予測研究に活用できる段階に到達した。 また、重水素プラズマではあるがヘリカル原型炉の新古典輸送解析に開発したコードを応用するなど、核燃焼プラズマの新古典輸送研究に向けた取り組みも開始できた。一方、当初24年度中に予定していた複数イオン種やα粒子を含めたシミュレーションの開発は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新古典粘性の計算法についてはほぼ完成したので、これからは実験解析への応用がメインとなる。LHDやRMP実験を行っているトカマクなど、様々な磁場配位へ応用することでコードの更なる検証と、プラズマ閉じ込めやフローに対する新古典粘性の影響についての研究を一層進める。 今年度は、計画から遅れている複数イオン種の取り扱いができるように新古典輸送コードの拡張に特に注力して研究を進める。α粒子輸送の取り扱いについては、FFHR概念設計活動で共同研究している研究者らが開発しているコードが既にあるので、自ら1から新しく開発するより、そのコードと自分自身のバルクプラズマの新古典輸送コードをどう連携させるかという方向性で進めるものとし、核燃焼プラズマの予測シミュレーションに必要な数値シミュレーションコード群の開発・検証・統合に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果を学会等で発表するため、国内学会3回(プラズマ・核融合学会、日本物理学会、国際土岐コンファレンス)および国際学会(Joint ISHW and IEA-RFP workshop)に参加する。その旅費及び参加費を研究費から支出する。
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