研究課題
平成25年度の主な成果の一つは、日本原子力研究開発機構(原研)が開発した中性粒子入射ビームによるモーメント入力や粒子種間摩擦力、高エネルギー粒子の軌道損失によるJxBトルクなど複合的に考慮してトカマクプラズマ中のプラズマ回転を解く統合輸送コードTOPICSに、本研究課題で開発したFORTEC-3Dコードで計算した新古典粘性の効果を反映させる連結シミュレーションを実現したことである。これによって、今までトカマクのプラズマ回転の研究で無視されていた、トロイダル磁場コイルが作る微小な非軸対称磁場摂動による新古典トロイダル粘性をFORTEC-3Dで評価し、その影響を考慮して原研のJT-60U装置におけるプラズマトロイダル回転を計算で評価し、観測結果と定量的に比較することが可能となった。原研の本多氏と共同研究を進め、過去に行われたJT-60Uの実験における新古典トロイダル粘性の影響を評価したところ、装置の持つ非軸対称性が生み出す新古典粘性を考慮するとトロイダル回転が2割ほど変わり、観測されたトロイダル回転分布を説明するのに不可欠な影響があることが判った。この研究成果はNulcear Fusion誌に掲載が決定した。もう一つの主な成果としては、ドイツ、スペイン、米国にある様々なヘリカル型プラズマ閉じ込め装置における新古典輸送計算にFORTEC-3Dコードを適用できることを国際的な共同研究を通じて示したことである。これによって、新古典輸送の3次元磁場形状に対する依存性の比較研究や、閉じ込め最適化に向けた磁場配位などの研究が、従来の計算法より詳細なFORTEC-3Dコードを用いて行う事が可能となり、今後の国際共同研究の更なる進展が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
新古典粘性の評価手法を実際のトカマク実験におけるプラズマ回転分布の評価シミュレーションに応用するなど、コードの開発・ベンチマークから実応用に順調に研究が進んでいる。また、海外にある様々なヘリカル装置における新古典輸送シミュレーションへの応用も進んでいる。この他、共同研究者とFORTEC-3D計算からガイディングセンター軌道の有限軌道幅効果を落として従来の局所近似計算を再現する手法も開発した。これによって、有限軌道幅効果が新古典輸送にどう影響しているかをより詳細に研究できるようになった。研究計画のうち、複数イオン種プラズマへのコードの拡張についてはまだ開発途中で、他の輸送シミュレーションコードにおいて同様の拡張を計画している国内外の研究者と議論を重ねており、複数イオン種用クーロン衝突項の開発とその検証を複数の異なるコード間で効率的に行えるように準備を進めている。
新古典粘性の計算法をトカマクのプラズマ回転の評価に応用する研究を引き続き進める。この研究については平成26年度のIAEA核融合エネルギー会議において共同研究者の本多氏(原研)が口頭発表を行う予定である。6月から7月にかけてスペインCIEMATとドイツMax-Planck研を訪問し、それぞれの研究所が持つヘリカル型プラズマ実験装置における新古典輸送研究への応用を進める。また、複数イオン種プラズマへの拡張に向けて海外の共同研究者とコードの開発と検証を進める予定である。平成25年度に共同研究者と開発したFORTEC-3Dによる局所近似モデルについては本年度前半に論文を共著で執筆する。
平成24年度にイタリアに出張するのにかかった経費が当初の予想より少なかったため残額が生じた。2014年6月23日から27日にドイツ、ベルリンで開催される41st EPS Conferenceに出席し口頭発表を行うための旅費と参加費、および2つの国内学会[PLASMA CONFERENCE 2014(2014年11月18日~21日、新潟、日本物理学会 第70回年次大会(2015年3月21日~24日、早稲田大学)]への旅費と参加費に使用する。その他国内他研究機関の共同研究者との論文執筆に向けた打ち合わせを計画。物品購入費として、その他研究に関連した専門書を数冊購入を予定。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Computer Physics Communications
巻: 185 ページ: 2313-2312
10.1016/j.cpc.2014.05.001
Nulcear Fusion
巻: 54 ページ: 043010
10.1088/0029-5515/54/4/043010
Nuclear Fusion
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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