研究課題/領域番号 |
23760811
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
時谷 政行 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30455208)
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キーワード | Mixed-material / 再堆積層 / ナノ加工 / 微細構造観察 / 電子顕微鏡 / プラズマ・壁相互作用 / イオンビーム分析 / スパッタリング損耗 |
研究概要 |
集束イオンビーム加工(FIB)による高精度のナノ加工技術と微細構造解析を併用し,大型ヘリカル装置(LHD:核融合科学研究所)のプラズマ対向材料表面に形成される金属/炭素/ガス元素の混合組成の堆積層(Mixed-material)のナノ構造と機械的特性およびプラズマ粒子捕捉特性を,トーラス壁面全体にわたって明らかにすることが本研究の目的である. 平成23年度までの研究で,トーラス壁外側に一周(10ヶ所)設置した試料(SUS, Siなど)の一部において,FIB加工後に透過型電子顕微鏡(TEM)による微細構造解析を実施した.その結果,LHDにおけるスパッタリング損耗はグロー放電洗浄による効果が支配的であることが明らかになった. 平成24年度は,同じトーラス壁外側に一周(10ヶ所)設置した試料(SUS, Siなど)の大部分ににおいて,TEMによる微細構造解析および,ラザフォード後方散乱法(RBS)と弾性反跳粒子検出法(ERD)の同時測定によるイオンビーム分析を実施した.結果より,LHDの第一壁材料(SUS)表面には,ヘリウムや水素粒子曝露による微細欠陥が多量に形成され,場所によっては炭素や鉄を含むMixed-material堆積層が形成されることが示されただけでなく,それらの形成状態はトーラス全体に不均一であり,場所による依存性が高いことが明らかになった.決められた試料を用いて,トーラス全体の表面変質分析を評価した例はこれまでに無いため,新しい重要な知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
LHDのプラズマ対向壁に設置した複数個のバルク試料(SUS, Siなど)において,集束イオンビーム加工観察装置(FIB)を用いた微細加工と透過型電子顕微鏡(TEM)による微細構造解析をトーラスの広い範囲(ほぼ全域)にわたって実施することができた.また,当初予定していなかったが,バルク試料に加えて,あらかじめ薄膜試料化したTEM観察専用試料も同時にトーラス全域に設置し,TEM観察を実施した.このような試料設置の工夫により,通常は広範囲での分析に多大な時間を要するTEM観察を本研究期間のうちに素早く実施することが可能となった.これに加えて,イオンビーム分析(RBS&ERD)による捕捉粒子や表面組成分析を用いることで,微細構造変化に伴う粒子捕捉特性変化もトーラス全域にわたって捉えることが可能となった.以上のことから,当初の計画以上に研究が進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
トーラス壁外側に一周(10ヶ所)設置した試料(SUS, Siなど)の大部分の分析が進んだが,まだ分析を行えていない試料も多数残っている.それらの試料に対して,集束イオンビーム加工観察装置(FIB)によるナノ加工と透過型電子顕微鏡(TEM)観察およびイオンビーム分析(RBS&ERD)による測定を実施する.結果より,これまで得られた損耗/堆積および粒子捕捉のトロイダル分布をより詳細に理解することができる. さらに,ナノ技術を利用した機械的特性評価試験にも取り組む予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
ナノ加工で使用する消耗品の購入,照射用試料の購入を予定している.またこれまでと同様に,本研究では他の大学や研究機関の装置を多く使用する必要があるため,他の研究施設への出張旅費および装置にかかわる消耗品が主な支出となる.
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