トロイダルプラズマにおける閉じ込め改善現象では、プラズマ中の径電場、あるいはそれに相当するプラズマ回転が鍵となる役割を果たす。電場・回転形成の機構の候補として『ポロイダル粘性がプラズマの回転速度に対して極大値を持つため、ポロイダル回転駆動力が粘性の極大値を超えた時に急激に回転が増大し、遷移を引き起こす』というシナリオが新古典理論から予測されている。 本研究では、トロイダルプラズマの閉じ込め改善に対する粘性の役割を検証するために核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)、並びに京都大学のHeliotron Jにおいて電極バイアス実験を行った。電極バイアス実験では、プラズマ周辺に挿入した電極を真空容器に対してバイアスする。電極バイアス実験には、(1) プラズマの径電場を外部から能動的に制御することが可能、(2) 電極電流の値から、プラズマ回転の駆動力とそれとバランスする粘性力を評価可能、という利点がある。 平成25年度のLHDでの電極バイアス実験では、これまでに実験が行われている磁場配位よりもさらに磁場リップルの大きい磁場配位を対象とした。今回のターゲットプラズマでは、これまでの磁場配位のプラズマよりも電気伝導率が大きいことがわかり、実験で用いたバイアス電源の仕様の範囲内では遷移は実現されないことが分かった。この結果は、実効的な磁場リップルが大きい配位では、粘性が増大し、遷移が起こりにくくなることを示しており、理論の予測結果を支持する結果である。 研究期間全体を通して、LHD並びに、Heliotron Jで磁場リップル構造の異なる、広範な磁場配位で電極バイアス実験を行い、ポロイダル粘性を理論的・実験的に評価した。さらに、これまでに東北大学ヘリアック装置、コンパクトヘリカルシステムで行われた電極バイアス実験で得られた粘性の値と比較し、実験と理論が良く整合することを明らかにした。
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