研究課題/領域番号 |
23760813
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
安原 亮 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30394290)
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キーワード | トムソン散乱計 / マルチパス / 共振器 / 大出力レーザー |
研究概要 |
大出力レーザー技術を応用した、共振器型レーザー散乱装置を核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)を用いて実証することを目的とする。像転送光学系とミラーによってプラズマを介した共振器構造を作成して、レーザー光をプラズマ中に複数回往復させることにより時間分解能や散乱光量の向上が実現する。これによりレーザートムソン散乱計測装置の時間分解能をサブミリ秒へ短縮し、測定可能温度領域を20keV以上の高温度領域へと拡大する。また散乱信号強度増加により測定精度を向上させる。このようなレーザー散乱計測装置高性能化により、LHDプラズマを始めとした環状プラズマ物理の総合理解に寄与するとともに産業用、民生用等の多くのプラズマの電子温度・電子密度計測への応用が期待できる。 H23年度は、筑波大学のGAMMA10装置に光学系を設置し、レーザー光を往復して(2回のプラズマとレーザー光との相互作用によって)約2倍の散乱光量の増加を確認した。これは計算によって算出した散乱光量の増加と一致した。 本年度は、GAMMA10での実証結果を受けて、LHDへの導入を試みた。LHDに既設のトムソン散乱装置に往復用のミラー、像転送用レンズの取り付けを行った。これによって通常のトムソン散乱装置に加えてレーザー光を往復させて、1つのレーザーパルスで散乱光を2回発生させることが可能となった。H24年度のプラズマ実験によって往復パスを用いたトムソン散乱光発生実験を行い、往復パスでの2回の散乱光の発生に成功した。またGAMMA10装置を用いてレイリー散乱実験を行って6回の散乱光発生に成功した。H25年度はトムソン散乱による複数回散乱光の発生の実証とLHDプラズマからのマルチパス散乱光を用いた電子温度算出を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までにより光学システムが単純な直線型の共振器構造でマルチパス方式を実証した。直線共振器によるレーザー散乱装置は、本提案のリング共振器部を直線型の共振器に置き換えたものである。プラズマ媒質を複数回プローブレーザー光が通過し、複数回の散乱光が得られるという意味において本質的に同じ効果が期待できる。GAMMA10でのマルチパス方式の実証結果を受けて、LHDへの導入を試みた。LHDに既設のトムソン散乱装置に往復用のミラー、像転送用レンズの取り付けを行った。これによって通常のトムソン散乱装置に加えてレーザー光を往復させて、1つのレーザーパルスで散乱光を2回発生させることが可能となった。当初の目的のLHDへのマルチパス光学系の構築という目的が達成された。そこでH24年度のプラズマ実験によって往復パスを用いたトムソン散乱光発生実験を行い、往復パスでの2回の散乱光の発生に成功した。 多パス化への取り組みとして、筑波大学のGAMMA10装置を用いて実験を行った。昨年度までの光学系に偏光スイッチ光学系を組み込んで、直線型の共振器を構成した。これによりレーザー光が共振器内で光学損失で減衰するまでの複数回往復が可能となった。本システムを用いてレイリー散乱実験を行って6回の散乱光発生に成功した。 上記によりH24年度までの研究によって光学システムとしては提案した研究目標を達成することができた。H25年度はトムソン散乱光による電子温度評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、LHDプラズマより得られたマルチパス散乱光の解析と多様なプラズマ条件でのマルチパス散乱光の取得を第一目標とする。LHD実験開始前の7月末までに光学システムの調整を終え,往復パスの散乱光の取得が可能な状態に準備を整える。LHDのプラズマ実験は全体スケジュールの管理の下で実験準備が行われるため、これに従って進めていく。10月からのプラズマ実験ではマルチパス方式のトムソン散乱システムを用いて、散乱光の取得を行う。その際、LHDで行われる各種プラズマ実験において複数の条件のプラズマからマルチパス散乱光を取得する。受光系の問題でデータ収集が困難な場合は、合計100測定点以上あるLHDレーザー散乱装置の受光系の一部ポリクロメーターの改造やアバランシェフォトダイオードのタイミング調整等を行い、散乱光の発生を確認する。取得した散乱信号から電子温度を算出して、マルチパス散乱光を用いた電子温度の評価を行う。 多パス化の検討では、GAMMA10において3パス以上のトムソン散乱光の取得を目指す。現在設置している光学系のアライメント調整を行い、GAMMA10のマシンタイム中にマルチパス散乱光の取得を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、LHDレーザー散乱計測装置の最適化を行う。それに伴った消耗品として光学素子の購入を計画している。 研究成果の発表および情報収集のためLAPD2013(米国、ウィスコンシン)、応用物理学会(京都)、レーザー学会学術講演会第34回年次大会、ASSP 2013 (フランス)への参加を計画している。またその他論文の投稿のために予算を使用する予定である。
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