研究課題/領域番号 |
23760818
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
松永 剛 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究員 (10391260)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 核燃焼・高圧力プラズマ / 磁気流体不安定性 / 高エネルギー粒子 / 周辺プラズマ / 周辺局在化不安定性 |
研究概要 |
本研究課題では高圧力領域で発生する高エネルギーイオン駆動モードの物理と MHD モード間の相互作用に着目している。これまでJT-60において高エネルギーイオン駆動 MHD モードと高圧力プラズマで発生するRWM、プラズマ周辺で間欠的にエネルギーを放出するELMの相互作用を観測しており、本研究ではその物理機構解明のためデータ解析、米国GA社DIII-D装置での実験提案を計画している。 まず、JT-60既存データの解析では、高圧力プラズマにおいてELMの発生によってRWMが不安定化しているデータを見出し、ELMによる高エネルギー粒子の損失がRWMの不安定化させたことを示唆する結果を得た。これは新たなMHDモード間の相互作用であり、高エネルギー粒子の振舞いがRWMの安定化にも影響することを示す興味深い結果である。また、高圧力プラズマの立ち上げ時に軸対称不安定性が発生しており、閉じ込め改善と深く関係している測地線音波モード(GAM)が高エネルギー粒子によって駆動された可能性を見出した。 次に、今年度の研究計画通り、DIII-D 装置が有する容器内コイルを用いたMHD能動診断のためディジタルロックインアンプを購入し、DIII-D装置に搬入・実装した。既存システムへの取り付けおよび各種試験を実施し、本計測器が外部印加摂動磁場を同期検波することを確認した。DIII-Dにおいて、JT-60と類似の高エネルギーイオン駆動モードの発生する高圧力放電の実験を二日間実施し、JT-60同様、DIII-Dでも高エネルギーイオン駆動モードがELMを誘発する現象を初めて観測した。これは高圧力プラズマにおいて、高エネルギーイオン駆動モードによるELM誘発が共通の物理である示唆する結果である。本DIII-Dでの実験は、次年度も計画されており、引き続き詳細な計測とデータ解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の主な研究目標は、(1)JT-60高圧力プラズマ放電の結果整理、(2)DIII-Dにおける実験に向けた準備(機器の購入・輸送)と実施、(3)JT-60とDIII-Dとの装置間比較である。(1)については、JT-60の高圧力プラズマにおいて新たにELMの発生によるRWM不安定化のデータ解析を進めるとともに、高圧力プラズマの立ち上げ時に観測した高エネルギー粒子駆動の測地線音波モード(GAM)の発生していることを見出した。(2)については、ディジタルロックインアンプを購入し、DIII-Dへの実装のため輸送し、現地にて既存システムに実装した。また、本機器を使用したMHD能動診断実験を実施した。今のところ、プラズマから安定なモードの応答は同定していないが引き続き実験を行う。(3)については、これまでJT-60で観測されている高エネルギー粒子駆動不安定性によるELM誘発について、今回DIII-Dにおいても同様の現象を初めて観測しており、次年度以降その解析を進める予定である。以上により、本研究課題が研究計画に則しておおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
H24、25年度においては、引き続き研究計画通り研究を実施するとともに、新たに注目すべき項目についても注力する。研究費の主な使用用途は、米国GA社DIII-D装置での実験およびデータ解析を進めるための海外渡航旅費、得られた成果を国際会議棟で発表するための旅費および論文作成の諸経費として使用予定である。また、必要に応じてデータ保存用ストレージや消耗品などを購入する。研究の進捗に応じて、次々年度の研究費を前倒する可能性もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究費は、海外での国際会議参加および実験参加旅費として使用予定である。また必要に応じて消耗品などの購入に使用する。
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