本研究課題では、将来の高圧力・核燃焼プラズマで発生しプラズマの閉じ込め性能に影響を及ぼすと考えられる高エネルギーイオン駆動モードおよびMHD モードとそれらの相互作用に着目して研究を進めてきた。当該年度においては、引き続きJT-60既存データおよび米国GA社DIII-Dで得られた新たな高圧力プラズマ実験のデータを解析し、高エネルギーイオンを駆動源として発生する不安定性が周辺プラズマで発生するELMと相互作用する物理機構について解析を進めた。その結果、高エネルギーイオン駆動モードによって周辺に輸送される高エネルギーイオンが十分であり、MHD安定性が安定限界に近い状況であれば、ELMを不安定化する可能性があることが周辺安定性を模擬した数値計算から分かった。また、この高エネルギーイオン駆動モードは基本波成分だけでなく高エネルギーイオン輸送と強く相関している高調波成分を伴うことが分かっていたが、この高調波成分はトロイダル方向周期数(n)が2の不安定性であることが新たに分かった。 本研究課題では、計画通りJT-60既存データ解析および外国装置への実験参加による新たな高圧力プラズマ実験データ取得するとともに、ディジタルロックインアンプ購入によるMHD能動診断をDIII-Dにおいて実施し、安定なRWMの応答を観測することができた。また、本研究計画を拡張し、高圧力プラズマの立ち上げ時に発生するトロイダル軸対称モードについても解析を実施し高閉じ込めモードへの遷移と深く関係のある測地線音波モードが高エネルギー粒子によって駆動されていることを見出し、その磁場揺動の空間構造を明らかにした。本研究課題で得られた成果は、4件の国際会議(うち一つは招待講演)および1件の国内学会において発表され、また2本の主著論文としてまとめられNuclear Fusion誌に掲載された。
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