研究課題/領域番号 |
23760821
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江原 真司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30325485)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 流れ加速型腐食 / PIV計測 / 速度変動 / 周波数解析 |
研究概要 |
流れ加速型腐食(Flow Accelerated Corrosion, FAC)はプラント配管で発生する代表的な流体流れによる配管減肉現象の一つである。FACでは配管からの鉄の溶出(物質伝達)が流れにより促進され、それは流動因子、材料因子、水質などの環境因子により影響を受ける。本研究では流体挙動、特に乱流強度およびこれまで考慮されてこなかった乱れのスケール(周波数・時定数)に着目し、これらが物質伝達に与える影響を実験的に明らかにするとともに、実験では取得が困難なデータ(壁ごく近傍の流れなど)を数値解析により明らかにする。未だ解明されていないFACの流動因子を特定し、それを踏まえてFACの制御技術を提案・実証することを最終目的とする。本年度はオリフィスを有する円管配管に着目して実験を行った。実機プラントのオリフィス下流での減肉データを参考とし、オリフィス下流における流れ場の詳細を屈折率調合PIV計測により管直径を代表長さとするレイノルズ数で50,000~150,000の流れに対し解析を行った。まずオリフィス下流で生じる再循環流れの再付着点を求め、その位置を基準(ZR)とし、壁面近傍における速度変動の周波数解析を0.2~1.0 ZRにおける位置で行った。速度変動のパワースペクトル密度(PSD)分布は、50 Hz程度まではほぼ一定となり、高周波数側で急激に減少するといったものになり、特定の周波数で卓越した値になるようなことはなかった。しかし、その一定値が位置により大きく異なり、実機で減肉が最大となる0.4~0.7 ZR で最大となるという結果となるなど、減肉と周波数特性には大きな相関が見られた。また、乱流エネルギーやレイノルズ応力に対しても同様に解析を行い、これらも上記区間で値が大きくなる結果となり減肉との相関が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ステレオPIVによる3次元は予備実験のみで本実験は未実施となっている。ステレオPIVではカメラを2台同時にセットして試験部を撮影しなくてはならないが、このことが実験スペースの制約から難しく、今後大きく修正しなければいけない点である。数値解析に関しては、既存コードの整備、メッシュ等の検討が行われた。本格的な計算は未実施となっていが、24年度に予定していた物資伝達の計算コードを前倒しで整備中である。計算機が予定通り手配できなかったこと、実験に時間を取られたため計算に割く労力が相対的に小さくなってしまったことがその理由である。24年度は別経費で新しい計算機を導入できその使用が可能なため、大いに進展することが期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
23年度と同じ体系の流路での可視化実験を行い、壁面近傍をよりクローズアップした撮影を行う。23年度では壁からの距離がおよそ0.13 mm 程度の位置の速度変動を解析したが、減肉にはもっと壁面に近い位置での値が影響を及ぼしていることも考えられる。24年度はまず速度変動の周波数特性の壁からの距離依存性を明らかにすることから着手する。その後で、同体系での物質伝達実験を行う。流体として水を、溶解させる物質として、水に対する溶解度の小さい安息香酸の結晶を用い、水を長時間流動させることで有意な物質伝達量を求める。数値解析は乱流物質伝達の計算コード整備を完了させ、実験と同じ体系で高Sc数壁面物質輸送を計算する。壁面近傍での速度場と濃度場・物質伝達係数との相関や、速度境界層外層の巨視的スケールの流れと壁面近傍の濃度場・物質伝達係数との関係を詳細な数値データから明らかにし、FACの流動因子を特定する。そして最終的には、例えば乱流中のある特定のスケール(周波数・モード)が流動因子の場合には、そのスケールを抑えるような流路の幾何形状(配管レイアウトや壁面構造等)や流入速度分布(人工的な偏流や旋回流等)を提案し、数値計算により流動場を予備解析した後に物質伝達実験によるFAC制御を実証するところまで研究を進めたい。そして配管減肉管理技術の高度化につながるよう、可能な限り実機配管にも適用可能な減肉低減手法を提案したいと考える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
予定していたクローズアップ撮影を行うためのレンズシステムは別経費で賄えたため購入していない。この分の経費を新たな可視化試験部(曲り管)に充て、24年度はアクリル製試験部をオリフィス流路だけではなく曲り管も用いて実験を行う。また屈折率調合PIV計測で必要なヨウ化ナトリウムも、消耗品として購入するほか、流体に混入させるトレーサー粒子も購入する。これは、試験部交換等で流動試験装置からヨウ化ナトリウム水溶液を抜く際に消耗してしまい、その分を補充する必要があるためである。また23年度の成果を学会等で発表するための旅費も計上している。物質伝達実験を行うための新たな試験部は、既存のものの改造で間に合うため経費としては計上してない。その試験部の内側に設置して減肉分布を計測する安息香酸も金額としては大きくないため計上していない。数値解析に関しては既存のリソースを使用できるため、経費としては計上していない。
|