研究課題
最終年度である平成25年度は、ベルギー・BR2炉の加圧水型原子炉模擬照射装置(CALLISTO)を用いて中性子照射された304ステンレス鋼を調べた。ニッケル-シリコン析出物が多数観察され、その数密度は、透過型電子顕微鏡で観察されたニッケル-シリコン析出物の数密度よりも一桁近くも高かった。すなわち、透過型電子顕微鏡では観察されなかったごく小さなニッケル-シリコン析出物が多数存在することが明らかになった。また、空孔や空孔-溶質複合体を、陽電子消滅(陽電子寿命測定、同時計数ドップラー広がり測定)実験で調べた。これらの結果を、昨年度までに得たデータと合わせて、ステンレス鋼の研究で広く用いられるOrowan硬化モデルに適用して、ステンレス鋼の照射硬化を予測し、実験値と比較した。その結果、透過型電子顕微鏡では観察されなかった微小のニッケル-シリコン析出物が、照射硬化に大きく寄与していることを定量的に解析できた。以上の析出物と転位ループとの位置関係を検討した結果、中性子照射量が十分大きい段階では、析出物は転位ループ以外のサイトでも形成していることが分かった。一方で、照射の初期段階では、析出物の前駆体と思われる溶質原子集合体は、転位(ループ)と思われるサイトに優先的に存在する可能性が示唆された。
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