X線管、ファンビームコリメータ、被写体回転用の自動ステージ、平行平板コリメータ、フラットパネルX線検出器を用いることで、第三世代コンプトン散乱X線CT装置のプロトタイプ機を試作した。ファンビームコリメータを設置することで、断層撮像面を限定しつつ、撮像面とは垂直な方向に対しては立体角を限定しない平行平板コリメータを設置することで、比較的高い効率でコンプトン散乱X線による画像を取得できる幾何学的配置を採用した。これにより、現実的な時間内に、コンプトン散乱X線による断層撮像が可能となった。また、本装置のもう一つの特徴としては、コンプトン散乱X画像と同時に透過X線画像も取得している点である。画像再構成法としては最尤推定期待値最大化(ML-EM)法を採用した。純粋なコンプトン散乱X線CTでは空間分解能が低いため、画質改善のため、コンプトン散乱X線CTと透過X線CTを組み合わせることとした。具体的には、ML-EM法において初期画像として透過X線により得られた画像を用い、コンプトン散乱X線により得られたデータを用いて逐次計算を進めて行き、画素値を補正する手法を考案した。複合CTで得られた画像では、透過X線により得られる従来のX線CT像と遜色ない画質が得られ、空間分解能としては2-3 mm程度が得られていることが確認された。また、断層像の断面プロファイルからは、高原子番号領域においても期待される電子密度に近い値を示すことが分かった。以上のことから、透過/散乱X線複合CT法を採用することで、従来の透過X線CTと同等の画質で、より電子密度に近い値を出力することが可能となることが分かった。
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