分析用中性子光源として活用可能な小型中性子ビーム発生装置の研究開発を、平成23年度に引き続き実験とシミュレーションの両面から行った。 本装置は放電現象と核融合反応を応用した中性子発生部と、その中性子を反射材と減速材を用いて目的とするエネルギーと形状を持ったビームに形成する部分より構成される。前者に関し、二次元粒子コードの開発と放電実験により中性子出力の増加のための放電特性の改善を試みた。特に実験において従来装置では陰極の固定精度に問題があったため、真空容器を電極間絶縁が兼ねる構造に平成23年度より変更した。当初の放電特性(放電電流を一定に設定し、ガス密度を変化させた場合の放電電圧の変化)は時間とともに変動し、再現性を持たなかったが、これは実験時間の経過とともに放電部の温度が最高数百℃と高温になることを考慮していなかったためであることを明らかにした。そこで熱電対を陽極裏側に取り付け、測定されたガス密度から放電部の温度を考慮した評価を行ったところ、再現性のあるデータが得られた。しかし、中性子発生率の増加が期待できる低ガス圧・高電圧における放電は不安定なままであり、これは設置した四重極質量分析計による測定結果から、絶縁材として用いたテフロンより放出された不要なガスが原因であり、絶縁材をセラミック系等の他の材料に変更することが必要であることがわかった。 また、ビーム形成部の開発では、前年度に提案した複合反射材の検討を引き続き行い、また従来直管状であった中性子引き出し管を屈曲形状にし、核融合反応部から出口が直接見込めないようにすることで、熱外から熱領域にエネルギー分布をもつ中性子ビームを取り出すことができることを示した。特に、熱外中性子を効率的に生成することは従来方法では困難であり、このように目的に応じたエネルギーをもつ中性子ビームを生成できることは本装置の特徴といえる。
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