研究概要 |
研究代表者は、これまで溶液中での利用がほとんど行われてこなかった配位高分子の高度にサイズ制御可能な高秩序細孔を利用して、セシウムを可能な限り選択的に捕集できる材料の開発を行うとともに、このようなセシウムの取り込み反応について詳細に調べることを目的とした研究を行った。 平成25年度はこの研究によって合成した細孔サイズを精密制御可能なMOF である(NH4)[Ln (C2O4)2(H2O)] (Ln = Y, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb) を使い、セシウムの取り込み反応が、どのような条件で発生するかを詳細に調査するとともに、このセシウム吸着材の適応範囲を調べた。 (NH4)[Eu(C2O4)2(H2O)] 粉末を水溶液中に分散して、CsHCO3を添加する滴定実験で、pH 7 付近で、加えたCsHCO3 の量にほぼ等しいNH4+ イオンがイオン選択性電極から検出され、MOF のイオン交換反応が確認された。酸性領域では、このようなイオン交換反応が起こらないことから、セシウム取り込み反応は溶液のpH に依存して中性から塩基性領域で起こることが示された。 またセシウムを取り込んだMOF であるCs[Eu(C2O4)2(H2O)]は、酸性条件において、Ln2(C2O4)3(H2O) に変化していることを粉末X線で確認し、取り込んだセシウムを放出できることを明らかにした。 以上の結果から、(NH4)[Ln(C2O4)2(H2O)]は中性、塩基性条件の溶液からセシウムを取る捕集剤であり、溶液を酸性条件にするだけで、セシウムを放出できるこれまでのセシウム捕集剤にはない性質をもつことが明らかとなった。現在セシウム捕集剤の処理処分が問題となっているが、このような捕集剤を用いれば、放射性セシウムを単離し、放射線源として利用できる可能性もあり、利用価値の高い捕集剤であることが示された。
|