研究課題/領域番号 |
23760837
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
横山 彰人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 技術員 (10532088)
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キーワード | シングルイオンヒット / イオンルミネッセンス / フォトルミネッセンス / 輝尽発光 |
研究概要 |
単結晶サファイアに炭素を添加したAl2O3:Cの極めて高感度な輝尽発光(Photostimulated luminescence; PSL)特性に着目し、1個のイオンの入射に対して充分な発光強度を有する試料の開発と、発光検出装置を組み合わせたリアルタイム照射位置検出システムの開発を3年間の目的とした。 初年度には、冷却CCDカメラ、超長作動ズームマイクロスコープ等より発光検出装置を構築するとともに、試料調整方法を確立するために、高強度のイオンルミネッセンス(Ion Luminescence;IL)及びPSLが期待されるAl2O3:Euを、イオン注入量や注入深さを変えて調整した。これに15MeV 酸素イオンを照射した発光検出実験では、最も感度の良い試料からは、200cps以上照射した際にILを捕えることができた。シングルイオンヒット実験ではビーム電流量が数cps程度と低いため、装置と試料の感度を高める改善が必要であることが分かった。 2年目は、初年度に引き続き試料の調製と発光検出実験を行うとともに、研究を効率よく進めるために、オフラインで実験可能であり、ILと同様に電子励起過程を伴い発光するフォトルミネッセンス(Photoluminescence; PL)測定を実施した。その結果、試料の表面から30 nm ~ 70 nmの範囲に、1立方ナノメートル当たり7.5 個を注入して、600℃で30分間熱処理したものから、最も強いPL及びILが得られた。この2年間の結果から、調整した試料の注入条件等に対するIL及びPLには相関があることがわかった。しかしながら、未だPSLを検出できていないことから、研究最終年度には、引き続き試料の調製と装置の改良を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本計画2年目の目標は、試料調製におけるイオン注入後の熱処理時間の調整と、シングルイオンヒットにおいて試料からのイオンルミネッセンス(IL)及び輝尽発光(PSL)を検出することであった。試料のイオン注入量などのパラメータに対するILやフォトルミネッセンス(PL)強度は増大していることから試料調製は進展しているが、PSLの検出には至っていないため、発光層となる試料中のイオン注入層の厚さ大きくすることや、発光検出装置の感度を向上する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、引き続きイオン注入による試料の調製と装置の改良を行う。試料調製に関しては、これまで扱ってきた300ミクロン厚のものから、シングルイオンが透過する100ミクロン厚以下の薄い試料に交換して、これに両面からイオン注入して発光層を増やす。また発光検出装置に関しては、電子増倍度が最大10万倍のイメージインテンシファイアをCCDカメラの前段に装着して輝尽発光の検出を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料開発に必要なサファイア基板などの消耗品の購入と、学会参加費や出張旅費に充てる。
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