最終年度に当たる本年度は,内循環流動層式ソーラー水熱分解器内における熱流体シミュレーションモデル開発を行うと共に、ソーラー水熱分解器の高効率化・大型化設計技術の確立を図った。併せて研究の総括を行った。具体的な研究成果は以下の通りである。 1)ふく射輸送解析は膨大な計算量を必要とするために,流体力学モデルとの結合は非常に困難であった。そこで,球面調和関数展開法による高速ふく射輸送解析モデルを応用した。この計算方法は,他の手法と比べて圧倒的に高速であり、太陽光が多重散乱を起こす流動層ソーラー水熱分解器に最適な手法であることを見出した。2)流動層内は,固体と気体が共存する固気二相流である。この固気二相流モデルは,体積分率法を採用することで高密度流へと展開することが可能となる。上記のふく射輸送モデルと連成することにより、内部の流動・温度場に関するシミュレーションモデルを開発した。3)ソーラー水熱分解器をモデルとした,可視化実験用流路を作製した。粒子の運動はハイスピードデジタルカメラによって撮影し,画像処理を行うことで内部循環状態の定量的な評価を行った。上記の計算結果と比較することにより、予測モデルにフィードバックすることが出来た。4)以上の知見を基に新型ソーラー反応器である内循環流動層反応器を大幅に改良した。 以上より、太陽エネルギーによる水分解反応の高効率化・大型化設計技術の確立を図った。得られた知見は国内外の研究会にて発表し、多くの反響を得た。
|