次世代のエネルギー資源、輸送形態として、ガスハイドレートに対する研究が盛んに行われている。ガスハイドレートは密度や構造が氷と似ていることから、従来の観測手段では氷点下における非破壊での識別や、非平衡状態での観測に困難さが伴う。本研究では、テラヘルツ時間領域分光法による観測でハイドレートと氷の定量的、定性的な識別が可能であることを示すとともに、複素光学定数、誘電定数を算出することで、ハイドレート基礎研究における新たな観測手段として確立する。また、高い時間分解能を有することから、動的なプロセス、例えば分解や生成における観測を行い、リアルタイムでの評価の実現を目指した。 低温を保ちながら試料交換が可能な分光用冷凍機を組み込んだ光学系を構築し、ガスハイドレート及び氷のテラヘルツ帯での基本特性を幅広い温度領域で観測した。テラヘルツ領域におけるガスハイドレートの特性を測定し、上記パラメータの温度依存性、周波数依存性を確認したところ、温度、周波数に対する相関性が見られた。これらの特性が同領域における氷の物性値と異なるため、この差を用いてガスハイドレートの相変化が観測可能であることが示された。非平衡状態においてガスハイドレートを測定したところ、時間波形にシフトが観測され、状態変化を実際に観測していることが判明した。さらに、極低温における氷、重水の氷のテラヘルツ帯での特性も計測した。広範囲における温度特性はこれまで報告されておらず、今後のテラヘルツ工学に利用できる基礎特性も得ることができた。
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