研究課題/領域番号 |
23770004
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
梶川 正樹 東京工業大学, 生命理工学研究科, 講師 (90361766)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 転移因子 / レトロトランスポゾン |
研究概要 |
FLAGタグを付加したヒト転移因子(L1)とゼブラフィッシュ転移因子(ZfL2-1)転移因子をHeLa培養細胞で発現させ、それぞれの転移因子の転移中間体(転移因子タンパク質RNA複合体)を精製した。その後、SDS-PAGE電気泳動で、この中間体に含まれるタンパク質を分離し、この中間体に宿主タンパク質が含まれていることを確認した。これらの宿主タンパク質を質量分析法で同定した結果、複数のRNA結合タンパク質が同定できた。これらのタンパク質は転移因子RNAを介して、転移中間体に含まれると考えられる。これらのタンパク質が転移因子のRNAと結合することで、転移因子のRNAが宿主細胞内で分解から保護されているのかもしれない。上記研究と並行して、転移中間体の形成に必要な転移因子タンパク質のドメインを決定した。この結果、上記で同定できた宿主タンパク質は、転移因子タンパク質と直接結合しているのではなく、RNAを介して結合していることが示された。次年度は、これら同定できた宿主タンパク質は転移因子の転移増幅にどのように関与しているのか解析するため、これらの宿主タンパク質を欠失(あるいはノックダウン)した培養細胞でのLINE転移頻度を測定する計画である。また、現在検出できている宿主タンパク質は、転移中間体に大量に含まれるもののみであることから、中間体の大量生成を行い、微量に含まれている宿主タンパク質の同定も目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は、ほぼ計画通りに転移因子の転移中間体の精製に成功し、また、その転移中間体に含まれる宿主タンパク質の同定にその一部ではあるが成功した。そこで、自己評価を(2)のおおむね順調に進展しているとした。しかし、当初予定していた転移因子配列間の差異の検出には至っていない。この課題は次年度への持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度同定した宿主タンパク質が真にLINEタンパク質あるいはLINE RNAと結合できるか検証する。結合解析には、各宿主タンパク質の発現プラスミドを購入し、LINEタンパク質との結合を、酵母two hybrid法、または、細胞内免疫沈降法を用いて検証する。 LINEタンパク質あるいはLINE RNAとの結合が確認できた宿主タンパク質について、LINE転移における機能解析を行う。申請者らは先行研究で、ヒトHeLa細胞およびニワトリDT40細胞でのLINE転移検出系を構築している。これらのLINE転移検出系を用いて、以下(1)~(3)の解析を行う。(1)[強制発現解析]:同定した宿主タンパク質をHeLa細胞内で強制発現させ、強制発現によるLINEの転移頻度変化を測定する。(2)[発現抑制解析]:各宿主タンパク質の発現をRNAi法で抑制し、発現抑制によるLINEの転移頻度変化を測定する。(3)[遺伝子欠損解析]:ニワトリDT40細胞は、任意の遺伝子欠損細胞の作製方法が確立されている。そこで、同定したヒトタンパク質のニワトリ相同遺伝子欠損細胞を作製する。この遺伝子欠損細胞を用いて、遺伝子欠損(完全なタンパク質発現抑制)によるLINE転移頻度変化を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
<今年度の執行額に残額が生じた状況>LINE転移中間体の精製が想定よりも順調に進行したため、今年度使用を予定していた研究費に残額が生じた。<次年度の研究費の使用計画>消耗品費:ヒトcDNAクローン配列2万円/クローン x 10クローン = 20万円、酵母two hybrid用試薬(選択用培地、コンピテントセル作成用試薬など) = 20万円、免疫沈降用抗体アガロース2万円/mL x 10mL = 20万円、siRNA 3万円/サンプル x 10サンプル = 30万円、細胞培細胞培養用培地(血清含む)7,000円/L x ~35L/年 = 25万円、トランスフェクション試薬(Fugene 6、Roche社)5万円/mL x 5mL/年 = 25万円、トランスフェクション用プラスミド抽出キット(Qiagen Plasmid Kit、Qiagen社)1,200円/回 x ~150回/年 = 20万円、常時使用する酵素・試薬類の経費 = 30万円、プラスチック・ガラス器具類の経費 = 20万円。旅費:国内学会での成果報告を年2回 = 10万円、国際学会での成果報告を年1回 = 20万円。
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