研究課題
セントロメア領域は、染色体の均等分配に必須なゲノムDNA上の領域である。セントロメア上に集積したキネトコア複合体に紡錘糸が結合し、両極に引っ張ることにより染色体の均等分配は行われる。このような重要な領域にも関わらず、セントロメア領域の形成および維持機構は明らかとなっていない。セントロメア領域の形成に必須の因子として、ヒストンH3バリアントであるCENP-Aが存在する。真核生物のゲノムDNAは、各2分子のヒストンH2A、H2B、H3およびH4からなるヒストン八量体にDNAが左巻きに結合したヌクレオソーム構造を基本単位とし、それらが数珠上に連なったクロマチン構造を形成している。CENP-Aは、セントロメア領域において、他のヒストンH2A、H2B、H4と共にヌクレオソームを形成することが知られている。セントロメア領域に形成されるCENP-Aヌクレオソームは、その立体構造が特徴的であり、それを目印として、他のセントロメアタンパク質が集積することで、セントロメア領域が形成されると考えられている。これまでにCENP-Aヌクレオソームの立体構造は明らかとなっていなかった。我々は、ヒトのCENP-Aヌクレオソームを試験管内において再構成し、X線結晶構造解析により、その立体構造を明らかにした。構造解析の結果、CENP-Aヌクレオソームに特徴的な構造を明らかにすることに成功し、2011年8月にNature誌にて発表した。CENP-Aヌクレオソーム構造の次の階層の高次構造として、セントロメア特異的なDNA結合タンパク質であるCENP-Bが結合したCENP-Aヌクレオソームが存在する。2011年度は、この複合体の試験管内再構成系の確立を行った。その後、X線結晶構造解析を行うために、結晶化条件の検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
2011年度は、セントロメア領域を形成しているクロマチン構造の基本単位であるCENP-Aヌクレオソームの立体構造を決めることに成功した。セントロメア領域のクロマチン構造を明らかにするためには、CENP-Aヌクレオソームの次の階層の高次構造を理解する必要があり、セントロメア特異的なDNA結合タンパク質であるCENP-BがCENP-Aヌクレオソームに結合した複合体が、次の階層の高次構造である。2011年度中に、この複合体の再構成系を確立しており、立体構造を決定すべく結晶化条件の検討を行った。サンプルを調製するという第一段階は、達成しているので、おおむね順調に進展していると言える。
2012年度は、再構成したCENP-Bが結合したCENP-Aヌクレオソームの結晶化条件の精密化を行う。得られた結晶を用いて、X線結晶構造解析法により、その立体構造を決定する。また、ヌクレオソームが二つ連なったダイ・ヌクレオソームも再構成し、ダイ・ヌクレオソームにCENP-Bが結合した複合体の構造解析も行う。
2012年度の研究費は、主に結晶化試薬、再構成に用いるDNAを調製するための酵素類、リコンビナントタンパク質を精製するための生化学用試薬に使用する予定である。
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