本研究では、サケ科魚類の大規模長期データを用いて、個体群動態、遺伝的構造、生活史変異を考慮した個体群ユニットの検討を行った。5-10㎞以内の近接河川では遺伝的分化が認められず均一の集団であることが示唆された。しかし、個体数変動の同調性を調べたところ遺伝的に均一な集団においても独自のデモグラフィーを示した。また、繁殖時期、卵サイズなどの生活史形質も河川間で違いが認められたが、明瞭な地理的クラスターは形成されなかった。本研究から、異なる視点により異なる個体群構造が見えることが明らかになった。“個体群”を調べる際には、着目する対象を明確にして、その適用範囲を認識することが重要である。
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