研究概要 |
1)サンプリング マレー半島の7地点(エンダウロンピン,キャメロン,ゲンティン,ゴンバック,フレーザー,タイピン,マラヤ大学構内)およびボルネオ島の1地点(ランビル)において,アリ植物オオバギ属に共生・寄生する昆虫類の調査をおこない,植物・アリ・カイガラムシ・シジミチョウ・タマバエ・カメムシのDNA標本を採集した.カイガラムシおよびカメムシに関しては形態による種同定の結果が得られ,カイガラムシについてはヒラタカタカイガラムシ属の1種,カメムシについてはヒョウタンカスメカメムシ属の7種がそれぞれ新種として発見された. 2)遺伝子マーカーの検索と開発 これまでに検索・開発した遺伝子マーカーを以下に列記する.アリ:6つの核遺伝子領域(28S rDNA, Argk, Histon 3, Ef-1a, LwRh, WG)および5座位のマイクロサテライト領域;カイガラムシ:2つの核遺伝子領域(Ef-1a exon and intron, WG);シジミチョウ:3つのmtDNA遺伝子領域(COI, ND5, 16S rRNA)および3つの核遺伝子領域(28S rDNA, CAD, ITS-2);タマバエ:1つのmtDNA遺伝子領域(COI);カメムシ:1つのmtDNA遺伝子領域(COI). 3)分子系統解析および集団遺伝学的解析 6つの核遺伝子領域に基づく分子系統解析と5座位のマイクロサテライト領域を用いたクラスター解析をおこなった結果,アリは6つの系統に分化することが明らかになった.また,2つの核遺伝子領域に基づく分子系解析をおこなった結果,カイガラムシは9つの系統に分化すること,および,それぞれの系統には単一のカイガラムシ種が対応していることが明らかになった.その他のシジミチョウ,タマバエおよびカメムシに関しては,それぞれの遺伝子においてDNA断片の増幅が確認されている.
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